SAPジャパンは、GRCソリューション(ガバナンス、リスク、コンプライアンス管理製品)の最新版「SAP BusinessObjects Process Control3.0」と、「SAP BusinessObjects Risk Management3.0」」を10月に発売する。
最新版では、2007年に経営統合したBusinessObjectsの製品および技術をSAP製品群に統合、リスク要因の重要度に応じて対応できるようにするとともに、SOX法以外のフレームワークにも守備範囲を広げているほか、自動化機能を拡充している。
同社ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部 GRC/EPM事業開発部 部長の中西正氏は、「今回の製品は経営管理の底辺を支えるもの」と強調。「効率性の向上」「コストの削減」「リスクやコンプライアンスへの確かな対応」がGRCソリューションの効果であるとし、SAPとBusinessObjectsの既存ユーザーに加え、未開拓の市場に対しても積極展開していく意向を示した。同社では両製品合わせて、3年間で100社程度への販売を目指す。
今回は両製品とも、重要度の高いリスク要因を優先的に評価・管理するリスクベース方式を取り入れている。
従来は定められた統制項目をすべて網羅的に扱うコントロールベースの統制方法を採用していた。最新版では、重要なリスク要因を重点的に管理し、リスクへの確かな対応をする一方、それほど重要ではないリスクは自己診断、あるいはテスト自体、実行しないようにして、統制活動の効率化を図っている。また、2つのソリューションを合わせて利用することで、内部・外部環境の変化に迅速に対応できるという。
「Risk Management」では、リスク項目ごとに定義済みのKRI(Key Risk Indicator:主要リスク管理指標)を提供したことも大きな特徴だ。「品質」というリスク要因では、「延滞通知」や「顧客からのクレーム」といった指標にそれぞれの「しきい値」を設定している。
たとえば「延滞通知」では「同通知」がすべての通知の5%を超えた場合、「顧客からのクレーム」では連続3カ月平均で10%を超過した場合に危険水域と認識、警告を発して顧客企業ができるだけ早くリスク管理に動けるよう支援する。
また、「Process Control」では、コンプライアンスフレームワークを拡張したことも注目される。従来は日本版SOX法(金融商品取引法)など、財務・会計に関連したコンプライアンス管理や評価に重点を置いていたが、最新版ではPCI(Payment Card Industry Data Security Standard:クレジットカード情報・取引情報の安全性を確保するために策定された、クレジット業界のグローバルセキュリティ基準)などのセキュリティ基準、FDA(米国食品医薬品局)などの業界規制のほか、企業独自の統制ルールなどの幅広いコンプライアンスフレームワークに対応しており、企業の財務リスクだけでなく、業務オペレーション全体に対する非効率な統制を原因とする失策の影響を把握できる。
さらに、「Process Control」は自動化機能を拡充しており、パッケージ化されたルールでコンプライアンス対応を強化した。200以上の定義済みスクリプトを活用、自動化コントロールの実施が可能になるほか、テストの内製化もできる。各プロセスでのテストがあらかじめ用意されることで、マニュアルや工数を大きく縮減することが可能だ。同社の調査によれば、ある企業では自動コントロールによりコストを3000〜4000万ドル削減できたという。
今回の最新版では、BusinessObjectsをはじめとする新たな技術成果を活用している。「Crystal Reports」「Xcelsius」といった、BusinessObjectsのレポーティングツールとの連携が可能になり、40以上の定義済みレポートも提供されることで、分析レポーティング機能が強化されている。また、SAPアプリケーションの入力画面では、Adobe Systemsの「Adobe Interactive Forms」と連携し、オフラインテストを実現している。支店や海外拠点では、ネットワーク環境が不十分でアプリケーションの配布が困難なことがあるが、Adobe Interactive Formsで作成した調査票を配布すれば、煩雑な処理を省いて本社と拠点との間でのテストが効率化される。また、新たに文書検索機能も追加された。
販売ターゲットは、まずは既存のSAP ERP、SAP BusinessObjects GRCソリューションのユーザーと、これらの導入を検討している企業だ。
SAP製品は「Process Control」「Risk Management」との親和性が高いため、連携させる場合の利便性などを訴求する。また、同社はSAPのユーザーではない企業にも照準を合わせ、文書管理、評価の効率化を考えている層や、他社のERPを使用している企業にも販売を促進していきたい考えだ。
同社ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部 GRC/EPM事業開発部 GRCグループマネージャーの中田淳氏は、「内部統制への対応が十分でないと、経営者の退任、株価の下落など、会社としての経営リスクに発展してしまうことさえある」と述べ、このような危機を回避するためにGRCソリューションの重要性が大きくなっていることを強調した。