「Oracle Solaris」新版、OpenStackに対応--仮想化環境での効率性向上

大川淳

2014-05-16 12:53

 日本オラクルは5月14日、UNIX OSの新版「Oracle Solaris 11.2」の概要を説明した。IaaS環境構築管理基盤ソフトウェア「OpenStack」ディストリビューションに対応するとともに、「Oracle Database」やJava、「Oracle Applications」に最適化しており、同社はエンタープライズ向けクラウド基盤として積極展開していく意向。SPARC、x86サーバ上で稼働する。

数分でクラウドに移行

 Solaris 11.2は、大企業のクラウド環境を念頭に設計されており、OpenStackやSDN(Software-Defined Networking)、クラスタリング、仮想化に適用しやすくすることを主眼としている。加えて、ITインフラの簡素化や信頼性、性能、効率化の向上ととともに、コンプライアンスへの対応、セキュリティ強化を重点化しており、企業がクラウドを低コストで活用できるよう支援することを図る。現在、ベータ版をダウンロードできる。

 Solaris 11.2の大きな特徴のひとつは、OpenStackディストリビューションに対応していることだ。OpenStackには、仮想マシン管理の「Nova」、外部ストレージ管理の「Swift」「Cinder」、ネットワーク管理「Neutron」などの機能がある。OpenStackが備える、これらの機能をSolaris環境に導入し、データセンター内の仮想化技術とインフラを包括的に管理できるという。

 Solarisでは、これらに相当する機能としてサーバ仮想化をつかさどる「Zones」と「Kernel Zones」、ネットワーク制御の「Elastic Virtual Swtich」、クラウドのストレージを管理する「ZFS File System」、データ保存、統御を担う「Unified Archives」などを擁している。

 同社では、企業がクラウドに移行する場合、Solaris 11.2であれば数分間で完了できるとしている。ライフサイクル管理機能も簡素化し、アップデートを統合的に実行できるため、アップデータ開始から再起動、再稼働までは数分間で済むという。

 ある大手金融機関の場合、他社の商用Linuxでは、年間での管理者1人あたり仮想マシン(VM)の数が250だったのに対し、Solarisでは4000であり、管理者の生産性が16倍に向上させられるという。

Bill Nesheim氏
米OraleでSolarisを担当するバイスプレジデントのBill Nesheim氏

 米OraleでSolarisを担当するバイスプレジデントのBill Nesheim氏は「クラウドの普及、仮想化の活用で効率化が進み、物理サーバの数は減ったが、仮想化環境での運用管理コストは上昇する傾向となっている。これらのような課題に対し、Oracleは技術の統合化、システム、インターフェースの簡素化などの策を実行し、企業がBest of Breedの価値を得られるよう支援していきたい」と語った。

 「物理環境と比べ、パフォーマンスが20~30%程度低下することもあったが、Solarisでは、このようなオーバーヘッドをほぼなくせる」とNesheim氏は述べ、効率化の追求を強調する。従来、仮想化環境では、オーバーヘッドの問題が指摘されてきたが、複数の仮想Solaris環境を形成できる仮想化技術「Solaris Zones」機能が強化され、統合型ハイパーバイザなどで実現したという。

 コストの点では「1VMあたり500ドルほど節約できる。VM数が4万の大企業であれば、2000万ドルのコスト削減になる」(Nesheim氏)としている。IDCの調査によれば、x86サーバと商用Linuxディストリビューションの組み合わせと比べ、SPARC/Solarisでは、3年間で総所有コスト(TCO)が6分の1にまで圧縮できるという。

宮坂美樹氏
日本オラクル システム事業統括 プロダクト・マネジメント・オフィス本部長 宮坂美樹氏

ハードウェアで暗号化

 セキュリティでは、稼働時と停止時のデータを保護するため、独自の読み取り専用の仮想環境を用意しているほか、OracleのSolarisアプリケーション、Oracle DBのJava JCEミドルウェアなどに対しSPARCシステム上でハードウェアによる暗号化が可能だ。

 Solaris 11.2は、バイナリ互換性を確保することで既存のアプリケーションを複数世代のSolarisで実行できるようになっている。すべてのリリースのSolarisでアプリケーションを変更せず実行でき、アプリケーションをリコンパイルして、SPARCとx86、いずれのシステムでも動作することを保証している。

 日本オラクル システム事業統括 プロダクト・マネジメント・オフィス本部長の宮坂美樹氏は「Solarisは拡張性も格段に高い。SPARC M6/Solarisは、1筐体あたりの最大メモリは32Tバイトであり、一般的なx86/Linuxの8倍。サーバ内の状況の監視、解析ではシステムを停止させずに実行できる。新たなサーバに移行する際も検証が不要。Solaris 11.2は、企業が求める要求を満たす、唯一のクラウドプラットフォーム」と話し、国内市場での展開に意欲を示した。

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