独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は5月22日、「エンタプライズ系ソフトウェア技術者個人の実態調査」報告書を公開した。この調査は、ソフトウェア産業が抱える課題を構造的に捉え、さらに有効な施策を検討することを目的としたもの。
技術者の就労時間について調べたところ、平均就労時間の中央値は月180時間で、組み込みソフトウェア産業と同水準となっている。平均値でみると製造業よりは高いものの、建設業よりは低い水準にある。ただし、月平均就労時間が200時間を超える「長時間労働者」の比率は40.1%で、「健全な水準とは言い難い状況」(IPA)としている。
収入については、年収の中央値が500万〜600万円で、組み込みソフトウェア産業と同水準であった。ユーザー企業と元請けベンダーの年収分布の差は小さい。ただ、ベンダー内で比較すると、元請け、一次下請け、二次下請けの順で、分布が低い側にシフトしていることが分かった。
技術者個人からみたプロジェクトの評価についても調べた。直近1年間の代表的プロジェクトの品質、コスト、納期(QCD)について聞いたところ、肯定的な評価は全体の50%に届かなかった。ただ、否定的な評価は20%程度であった。プロジェクトの成功要因としては「コミュニケーション」「管理手法」を挙げる人が多かった。
プロジェクトマネジメント上問題があり、かつ改善すべきと認識されている項目は、上から「スキル」「要員調達」「実施スケジュール」となった。要員調達については、単なる人材不足ではなく、適材適所の人材配置ができない時に問題が起こりやすいという回答もあった。
調査ではこのほか、産業階層別、外注形態別の傾向分析などもしている。IPAでは、ソフトウェア技術者の職場実態について、「一部厳しい状況が疑われる部分はあるものの、産業全体としてはそのような状況ではないことが確認できた」としている。技術者個人は、報酬への不満は感じつつも仕事のやりがいをスキルアップなどに見出しており、またモチベーションの正のスパイラルを確認することができたとした。
調査は、ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)のダイレクトメール送信先とウェブ調査会社の一般モニターを中心に調査協力を募り、2168件の回答を得た。なお、「ユーザー(発注業務)」「ユーザー(自社開発)」「元請け」「一次下請け」「二次以上の下請け」は、それぞれ17%、24%、20%、13%、8%であった。