「パスワードに引退してもらう」--シマンテック、アカウント保護で新認証技術

吉澤亨史

2014-02-21 14:13

 シマンテックは2月19日、オンラインアカウント保護製品「Symantec Validation and ID Protection(VIP)」にAccess Push(モバイルプッシュ認証)の機能を追加したと発表した。代表取締役社長の河村浩明氏は「最もエキサイティングな発表」で強調した。世界に先駆けてのもので、海外では2月24日に発表する予定だという。

河村浩明氏
シマンテック 代表取締役社長 河村浩明氏

 日本での先行発表、提供開始の理由として河村氏は「ひとつは日本のコンシューマーは世界でもセキュリティの要件が高い。最初の取り組みを日本で行うことで製品をブラッシュアップしていく。もうひとつは、もともとSymantec社内の認証用に使っており、非常に大きな可能性を確信した。パスワードはセキュリティに大きく貢献したが、今回の機能で引退してもらうことになる」と述べた。

 米本社Symantecのプロダクトマネジメント担当シニアディレクターであるRoger Casals氏は「Access Push機能は広く革命を起こす」とアピール。不正アクセスやオンラインバンキングの被害の現状を紹介。フィッシング、スパイウェア、パスワードリスト攻撃、MITB(Man in the browser)といった最近の攻撃で“パスワード”が共通項であるとした。

 同社が日本を対象にした調査では、ユーザーの7割が平均20のサイトを利用しており、記憶できるパスワードは3つ以下と答えた。つまり、同じパスワードを使い回しているのが現状だ。

Roger Casals氏
Symantec プロダクトマネジメント担当シニアディレクター Roger Casals氏

 乱数表やワンタイムパスワードなどを併用することでセキュリティを高めているケースもあるが、こういった解決策では十分ではなく、ユーザーの負担も大きい。そこでパスワードのみのセキュリティ問題を解決するため、Access Pushを導入するとしたという。

 VIP自体は、ユーザー名とパスワードを組み合わせて認証を補強するソフトウェアだ。Access Pushを追加したことで、ユーザーはオンラインのアカウントにログインする際にAccess Pushからのプッシュ認証でモバイル端末上で承認されることになる。

 つまり、Access Pushは、ユーザーのスマートフォンを活用することで、パスワード入力の必要性をなくすというもの。スマートフォンに専用のアプリをインストールすることでユーザーアカウント情報をひも付け、PCなどでログインする際に認証確認がスマートフォンにプッシュ送信される。ユーザーがアプリ上で認証を許可することで、PCなどでのログインが可能になる。

認証プロセス
Access Pushを追加したValidation and ID Protectionでの認証プロセス(シマンテック提供)

 Casals氏は特長として「ボタンを押すだけの簡単さ、シームレスに認証情報を組み合わせており、ユーザーに意識させないこと、そしてセキュアな送金認証にも利用できるセキュリティの高さ」を挙げた。Access Pushは第1段階にあるという。

 第1段階はユーザー名、パスワード、プッシュ認証の組み合わせであり、第2段階ではパスワードの代わりにPINコード、第3段階では指紋などの生体認証へと発展させていく。

 さまざまなシーンへの応用が可能であることも特長になる。たとえば、ATMで振り込む際に家族のスマートフォンにプッシュ認証を送ることで振り込め詐欺を防げるという。カード決済や学童への安全サービス、マンション管理や高齢者の見守り、有料放送の認証、複数の医療機関をまたいで個人情報を活用する際の本人への許可など、多彩な活用に対応することで全ての国民に安全を提供できるとした。

 税別価格は1000人の場合で1ユーザーあたり年間2400円。ネットバンキングのような大規模導入では案件ごとに相談となる。スマートフォン用アプリはAndroid 3以降、iOS 5/6/7/7.1以降に対応しており、今後はWindows Phone、Blackberry。さらにスマートフォン以外の“ガラケー”にも対応していく。「年内に第3段階(生体認証)まで提供したい」(Casals氏)という。

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