マイクロソフトは周回遅れか?--「Google Wave」対「Bing」

飯田哲夫(電通国際情報サービス)

2009-06-02 12:00

 別にGoogle WaveとBingを直接比較しようというわけではない。たまたま同じ日に入ってきたニュースなので、ここから何か読み取れそうだと感じたまでである。ということで、今回はGoogle WaveBingのニュースから、GoogleとMicrosoftの目線の相違、戦略的な優位性の有無について議論してみたい。

Google Waveの位置付け

 Google Waveはついに来たという印象を受ける。もともとの着想は2004年だというから、まさに“Web 2.0”というキーワードがブレークした年である。つまり、インターネットが一方向的なチャネルから、双方向のコラボレーションチャネルへと脱皮した年である。CNETの記事にあるように「今日のネットユーザーの間には様々なコミュニケーション方法、共有サービスやツールが存在し、一方でそれらがユーザーのつながりを分断しているのが現状」である。

 つまり、インターネット上のコミュニケーションツールは、Web 1.0からWeb 2.0という変化の中で段階的に追加されてきたので、メールのような非同期のコミュニケーションツールとメッセンジャーのような同期型のコミュニケーションツールは分断されている。また、SNSやWikiのようなコラボレーションツールもバラバラで、1つのコラボレーションや会話が始まってから終わるまで、バラバラのコミュニケーションが展開されることがよく起きる。

 Google Waveは、そうした一連の作業を「Wave」として捉え、それを中心として相手の状況に応じてメールやメッセンジャー、コラボレーションツールが組み合わせられるように配置している。それゆえに、途中から参加したメンバーも「Playback」機能で、会話を追いかけることが容易にできる。ウェブが一方的なコミュニケーションから、テーマを中心としたカンバセーションやコラボレーションへと移行したのに合わせ、コミュニケーションツールを刷新したものと言えるだろう。

検索エンジンの位置付け

 一方、検索エンジンは、インターネットサーバが増大し続ける中で、その巨大なブラックボックスに光を当てるために生まれてきたものである。そしてその中を覗くのがブラウザである。しかし、一方的に情報を発信するスタティックなサーバ群に対して、検索エンジンで目当ての情報を探すという行為には、ダイナミックなコラボレーションの要素はない。検索エンジンは、今でもその重要性が落ちることはないが、情報量の急速な拡大を見せたWeb 1.0時代のツールであるという印象は免れない。

 それでも検索エンジンが生み出す広告収入は無視ができず、その領域においてGoogleが圧倒的シェアを持つことから、MicrosoftがBingを投入することも理解できる。そして、Bingは、よりユーザーの利便性を高めるために意思決定に関わる機能を強化しているという。しかし、それでも、同じ日に公表されたニュースでありながら、BingよりもGoogle Waveが気になるのは、BingがWeb 1.0機能を強化したものであるのに対し、Google Waveが未成熟ながらもウェブのこれからを感じさせるからだろう。

Microsoftの勝機

 検索エンジンだけについて見れば、Microsoftは周回遅れだろう。ただ、いかにGoogleが検索エンジンで大きなシェアを占めていようとも、検索というスタティックなウェブを前提とした行為自体が古臭くなってきている以上、検索へのこだわりは捨てて、むしろその先を見据える方が面白いのではないだろうか。今は広告収入ゆえに検索シェアというのは重要かもしれないが、いずれだから何だという時がくるような気がする。

 GoogleはGoogle docsなどのビジネスアプリケーション領域への進出を目論んでいるが、現時点でその分野で圧倒的に強いのはMicrosoftである。ビジネスコラボレーションという点では、「Office Live Workspace」などの試みがみられるが、Microsoftにはこうしたビジネスアプリケーション分野の強みを活かして、あっと驚くようなことをやって欲しいと期待したい。

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