マイクロソフトのYahoo買収断念は賢明な判断

文:Mary Jo Foley(Special to ZDNet.com) 翻訳校正:菊地千枝子

2008-05-06 06:17

 米国時間5月3日にMicrosoftがYahooの買収を断念したことが発表されたが、このことをおそらく多くの人が、Yahooの勝利とMicrosoftの最高経営責任者(CEO)であるSteve Ballmer氏と同社の敗北と描くことになるだろう。筆者はどうかって?これはMicrosoftが成しうる最も賢明な動きであったとみている。

 実にMicrosoftが手を引く判断を下したことは、筆者の同社に対する将来的な信頼を回復するものであるとまで言おう。(アップデート:筆者だけではないようだ。一例として、Mini-Microsoftも目下この提携が頓挫したことを祝うためにCol Solareワインを味わっている。)

 Microsoftが440億ドルでできることは、ほかにも実にたくさんある――オンライン広告市場のほか、他の非サービス中心ビジネスが堅固であるように確保することもできる。

  Ballmer氏が5月3日に最高経営責任者(CEO)のJerry Yang氏に送付した書簡では、Ballmer氏はMicrosoftのオファーを、Yahooとその役員会が望むように1株あたり37ドルに引き上げるつもりはないと述べていた。Ballmer氏はまた、多くが予測するようにYahooの株価が急落したときに、再び舞い戻ってオファーをすることに関心はないようなことを述べている。また同書簡のなかには、反トラスト規制当局がGoogleとYahoo間のいずれの広告協定も必ずつぶすように Microsoftは全力で取り組むつもりだという威嚇も、あまり包み隠さずに示されていた。

 アップデート:YahooのRoy Bostock会長は、Ballmer氏の書簡が発表された数時間後にこの提携が実らなかったことに関する声明を発表した:

 「株主価値の最大化と、Yahoo!がその市場における成功とリーダーとして位置づける戦略的機会の追及に注力し続ける。今回のプロセスの当初から、わが独立役員会と幹部は、Microsoftのオファーがわが社の価値を過小評価しているとする信念に忠実であった。そして非常に数多くの株主がその見解の表明に加わったことに感謝している。Yahoo!の収益性は高く、成長を続けており、まだ比較的若いオンライン広告市場での大きな機会をとらえるための戦略的計画をうまく実行している。わが社の2008年第1四半期の堅実な結果と2008年全体の営業キャッシュフローの見通しが改善したことは、同社の進歩を反映している。」

 最初からずっと、小生をはじめとする多くのMicrosoftウォッチャーが、MicrosoftとYahooの間には重複する点が多すぎると指摘していた。Yahooのオープンソースベースのプラットフォームと戦略は、MicrosoftのWindows中心の戦略と組み合わせるのは間違いなく困難なこととなったであろう。そしてこの取引に難色を示しているのはYang氏やYahoo側のその他だけではなかった。Microsoft側にもそう考える向きがかなりいたのだ。たしかにMicrosoftはYahooの広告製品のラインアップを自社のそれと組み合わせることもできたかもしれない。そしてMicrosoftとYahooの広告ネットワークが、発行人や広告主にとってより魅力的なものとなったかもしれない。しかし本当にそれに440億ドルの価値があっただろうか?

 Microsoft幹部は以前に、Web 2.0の世界では悪魔だと思われている会社と取引するように企業を説得するには、Microsoftの資金力だけでは――たとえたくさんあったとしても――十分でないことも多いと述べていた。しかし今回はMicrosoftが悪魔の帝国であるという評判が、実に悪い動きを阻止するのを助けることになった。

 読者は賛成するか?そしてMicrosoftは今度、最高財務責任者(CFO)のChris Liddell氏のポケットの中で使われたくてウズウズしている440億ドルで何をすべきだろうか?

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    初心者にも優しく解説!ゼロトラストネットワークアクセスのメリットと効果的な導入法

  2. ビジネスアプリケーション

    改めて知っておきたい、生成AI活用が期待される業務と3つのリスク

  3. ビジネスアプリケーション

    ITR調査結果から導くDX浸透・定着化-“9割の国内企業がDX推進中も成果が出ているのはごく一部”

  4. セキュリティ

    「iPhone」の業務活用を促進!セキュリティ対策で必ず押さえておきたいポイントとは?

  5. セキュリティ

    「2024年版脅威ハンティングレポート」より—アジアでサイバー攻撃の標的になりやすい業界とは?

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]