What's up, man?
Barack Obama大統領の就任演説があちらこちらで話題になっていますね。前回、「コメディアンはオバマよりブッシュがお好き?」でコメディアンは失言が多い政治家が好きというお話をしました。大統領選挙を話題にあげたこともあり、何か前回に続くネタはないものかと不純な動機でObama大統領の就任演説には結構注目していたのですが、あまりに素晴らしい演説に胸が熱くなってしまいました。Kennedy大統領の時代を知らない私には、初めて真に神聖な心のスピーチを聞いたという感じがしました。
何かを笑い飛ばすには、いろいろなことを知っていなければいけません。「しゃれにならない」と日本語でも言いますが、笑っていいことと笑ってはいけないことをきちんとわきまえるのも笑いのルールです。今回は、前回とは違った視点から、大統領戦後のObama大統領の演説を通して彼の言葉のパワーとアメリカの歴史に少し触れてみたいと思います。
Obama大統領は、アメリカ合衆国建国以来初めてのアフリカ系アメリカ人の大統領です。アメリカという国を理解するに当たり、人種差別の問題を避けて通るわけにはいきません。KKKなど人種差別の集団は今でも存在するのです。
1800年代、アメリカは広大な農地を開拓するため、「人」としてではなく「労働力」としてイギリスからアフリカ系住民の奴隷を多く買い取りました。のちに、農業中心で奴隷が貴重な労働力であった南部と工業化の進む北部との間で「奴隷制否定 対 奴隷制肯定」の構図ができあがり、これが対立のきっかけとなって南北戦争の悲劇へとつながったのです。
南北戦争は、アメリカ人同士が戦った悲しい歴史です。Obama大統領が演説の中で、アメリカがひとつになるきっかけとなったつらい過去として南北戦争と人種差別を挙げたのは、そんなアメリカの悲しい歴史を繰り返すなというメッセージです。
...because we have tasted the bitter swill of civil war and segregation, and emerged from that dark chapter stronger and more united...
我々は、南北戦争そして人種差別のつらい過ちがあったからこそ、闇からはい出し、より強く、そしてよりひとつになれたのだ。
アメリカにおける人種差別は深刻な問題です。しかし、差別は人種間だけに存在しているわけではありません。宗教も同様に差別の問題をはらんでいるのです。Obama大統領は、国家をあらゆる宗派の集合体であると表現しました。アメリカに限らず海外で日本人が驚かれるのは、宗教を持っていないと言った時です。アメリカ人にとって信仰する宗教を持っていないというのは驚くべきことなのです。差別は自分と違った理解できないものに対する偏見から生まれます。つまり、無宗教も差別の対象になり得るのです。そのことを理解していれば、Obama大統領の言う「宗教」の中に「無宗教」が入っているのは、差別に対する細やかな気遣いだと私は感じました。
We are a nation of Christians and Muslims, Jews and Hindus - and non-believers.
我々は、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、ヒンズー教、それに無宗教者による国家だ。