この特集「再興に備える『人的資源活用』の基礎」では、企業を動かす社員を経済の復興期において競争力の源泉となる貴重な「資源」ととらえ、主に組織的な面から、その資源を有効に活用する考え方について見てきている。
前回(あなたは上司の評価に納得していますか?--「人事考課」の正しいやり方)は、モチベーションの維持や業績確保のために必要不可欠な「評価」のフレームワークについて考えた。今回は、資源の価値を高めるための「人材育成」に関して、企業の現状はどのようになっているのか、NTTレゾナントがまとめた調査報告書から見てみよう。
NTTレゾナントは、2009年9月に実施したセミナーにおいて、人材育成の実態調査結果を公開した。同社はポータルサイトの「goo」を運営している会社として知られているが、同時に、10年前から人材育成に関するコンサルティング事業にも、かなり力を入れている。
育成の重要度が高いのは「営業の中堅管理職」
NTTレゾナントでは、多くの企業において経営の重要課題と考えられる、人材育成に関する制度や仕組みの整備状況、運用の動向を把握するための調査を毎年実施している。今回の調査は、2009年6月から7月にかけ、約5000社を対象に実施されたものだ(回答企業は170社、回答率3.4%。有効回答167社、有効回答率98.2%) 。外部からは見えにくい人材育成の運用実態を知るための調査であり、基本的には次の4つの領域を調査対象とした。
同調査では、まず領域1の「経営戦略と人材像」において、経営層が抱える主要な課題について調査している。外的環境の経営課題として上位にあがったのは「競争の激化」「製品やサービスに対する顧客要求」「コンプライアンスの強化」であった。一方、内的環境における経営課題としては「収益性の向上」「人材育成」「顧客満足度の向上」が上位だった。
さらに、主要な内的課題の1つである「人材育成」については、「今後3年から5年で重要度が高まると考えるのは、どの層の人材か」という質問に対し、2008年の調査においても「営業層」の重要度は高い傾向があったが、2008年秋のリーマンショック以降の急速な景気後退を受け、今回の調査においても「営業層(特に管理者層、中堅層)」が育成対象層として重要度を増してきていると報告した。