質の高い業務は「段取り」と「情報連携」から生まれる

富永康信(ロビンソン)

2009-05-20 21:00

 前回、BPM(ビジネスプロセス・マネジメント)を推進し、組織に定着させるためのプラットフォームとなるBPMS(BPM Suite)について紹介した。

 それらは、ERPやCRMなど、部門をまたがるような大規模な基幹業務とのデータ・システム連携を担うものだったが、業務プロセスの改善サイクルは必ずしも基幹システムだけで行われるわけではない。ボトルネックは現場レベルでも常に起こっており、個人が関わる業務の段取り(作業手順)への共通理解と、その改善サイクルが、組織全体で見た場合のBPMの効果に与える影響は大きい。

 最適な「段取り」を共有・実行し、効果を高めていくにあたって、業務の「入り口」であるフロントシステムで、プロセス管理を実施することが効果的なのである。

「業務品質の低下」というボトルネック

 では、現場レベルでの作業プロセスのボトルネックとは、具体的にどのようなものがあるのだろうか。

 例えば、コンタクトセンターなどは人材の入れ替わりが頻繁に発生するため、オペレーターによって経験やスキル、熟練度などの差が大きく、業務品質にバラツキが発生しやすい分野といえる。

 実際に、研修やトレーニングの実施、詳細なマニュアルやFAQなどの準備といった形で、業務品質の差を埋めるための試みは行われている。しかしながら、実際の問い合わせ内容は千差万別。マニュアルにない柔軟な対応が求められることも多い。それがボトルネックとなって、顧客満足度が下がれば、企業価値は損われることになる。

 また、近年は業務の多様化やシステムの複雑化が進むことで、社内に数多くのシステムが散在し、どういった場合にどのシステムを使えばいいのか分からない、あるいはどこに情報があるのかが分からないといった問題や、個人のスキルレベルによってはシステムを使いこなせないなど、業務の現場とシステムとの間にギャップが発生する。

 別の業務である「見積書作成」を例に取ってみても、「過去の取引事例の検索」「提案書の作成」「関係部署への見積依頼」といった複数の作業が必要になる。これらは、「顧客案件情報管理システム」「提案書作成支援システム」「見積もり依頼ワークフロー」といった複数のシステムを使って進めることになるが、その使い分けは通常、個人のスキルやノウハウに依存しているのが現状だ。

「フロー」と「ガイド」で現場の業務をナビゲート

的池陽氏 「業務ポータルの特長は、組織が個人に求める業務に合せて情報を組み立てられる点にある」と話す、日立製作所の的池陽氏。

 「現状、業務経験が相対的に浅い人が、複数のシステムを使って業務を進めようとすれば、いったん業務をストップさせるか、時間をかけて対応せざるを得ない。さらに、そうした問題の原因が既存システムにあると考えて、システムにさらなる投資をしてしまった結果、システムが複雑化してしまうことも少なくない」と語るのは、日立製作所のソフトウェア事業部でアプリケーション基盤ソフトウェア本部第1AP基盤ソフト設計部の主任技師を務める的池陽氏だ。

 日立では、ベテランの作業手順や知識・ノウハウとシステムの融合を実現する業務ポータル「uCosminexus Navigation Platform」(以下、業務ポータル)を開発。2009年2月に正式リリースした。

 SOAプラットフォームを構築・運用するためのミドルウェア製品群「Cosminexus」の、フロント統合基盤(ビジネスユーザーが活用するツール群)のカテゴリへ新たに加えられたこの業務ポータルは、フローチャートとガイダンスを同一のウェブ画面上に表示し、組織や個人が蓄積している、業務のための知識・ノウハウを共有するシステムだ。

 開発にあたった的池氏は、「個人レベルでの仕事の段取りといえる“作業手順”をフロー図として体系化すると同時に、各プロセスと結びついたバックエンドの既存システムを連携させることで、必要な情報を提供し、業務遂行をスムーズにナビゲートできるように工夫した」と説明する。

「蓄積」「利用」「改善」のサイクルで作業プロセスを最適化

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