工事進行基準適用に必要な管理体制構築を“進化のステップ”で見る(前編)

木村忠昭(アドライト) 2009年05月15日 08時00分

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 工事進行基準が原則適用となる「工事契約に関する会計基準」が、2009年4月1日以後開始の事業年度からいよいよスタートとなった。この連載では、工事進行基準適用のために必要となる要件や対応のポイント、そしてその前提となる個別原価計算に焦点を当ててまとめてきた。今回は、実際のプロジェクト管理体制構築の事例を踏まえた個別原価計算の“進化のステップ”を説明しながら、工事進行基準の適用に必要な管理体制とその構築プロセスについてみていきたい。

 個別原価計算を行う企業が、プロジェクト管理体制を構築するにあたってのステップは、一般化して以下の5つのステップに分けて考えることができる。それぞれのステップごとに、対応のポイントと問題点について説明していこう。

個別原価計算 進化のステップ ※画像をクリックすると拡大して表示されます

第1ステップ:ドンブリ勘定であり、プロジェクト別の製造原価が把握できない

 これは、原価計算を全く行っていないケースである。この状態から個別原価計算制度を構築するためには、まず、製造原価部門の開発者が「どのプロジェクトに何時間費やしたのか」という情報を収集するためのタイムレポートを実施する必要がある。

 対応のポイントとしては、まず適切なタイムレポート制度の導入があげられる。具体的には、後からタイムレポートの内容を勝手に変更できないような機能や、各スタッフの稼働状況につき上長またはプロジェクトマネージャーが承認を行うための機能などが、内部統制上必要になる。また、実際の勤務時間と整合したタイムレポート制度が前提になるため、勤怠制度にも留意した仕組み作りが欠かせない。

 タイムレポート制度の実際の運用にあたっては、プロジェクトの区分や作業工数の区分を企業の実態にあわせて適切に設定しているかが、プロジェクト管理の成功の鍵となってくる。プロジェクトの区分という観点からは、ソフトウェア会計における開発フェーズの区切りや、部門・顧客・製品セグメントといったような切り口からの関連性も考慮しながらプロジェクトコードを設定し、全社的に体系化していくことが望まれる。ただし全社的にこれらを意識したプロジェクトコードや作業工数を設定したとしても、運用の段階で個人間や部門間でバラつきがあると、その精度について問題が出てくる。このようなバラつきをなくして運用するためには、企業ごとの運用マニュアルの作成、社内に浸透させるための活動が必要になってくる。

 原価計算を全く行っていなかったとしても、結果的に財務諸表における損益計算書が適切に作成できるケースも考えられる。それは、すべてのプロジェクトが売上原価となり、なおかつ、期末時点で仕掛プロジェクトが存在しない場合だ。このような場合には、製造原価部門を適切に設定しておけば、製造部門で発生したその期間の費用がすべて売上原価となるからである。ただし、プロジェクトごとの製造原価が把握できないという点では経営上非常に大きな問題があり、また、期末に仕掛プロジェクトが存在する場合には財務諸表の作成も行えないことから、早急に個別原価計算を実施する必要がある。

第2ステップ:年度決算の仕掛品計上のために原価計算を行う

 第1ステップでの問題点として、プロジェクト別の製造原価を把握できないことと、場合によっては財務諸表を作成できないことがあった。このうち、財務諸表の作成のために必要性に迫られて原価計算を行う、というのがこのステップになる。つまり、仕掛プロジェクトにのみ原価計算を実施して仕掛品の金額を把握することで最低限の原価計算で財務諸表を作成しようという試みだ。

 対応のポイントとしては、原価計算における費用の適切な集計が重要だ。原価計算を行うのが仕掛プロジェクトのみとはいえ、それらに対しては、適切な労務費単価の設定、製造間接費の配賦方法を設定したうえでの個別原価計算を行い、仕掛品の金額を算定する必要がある。その上で、適切な費用集計による個別原価計算をすべてのプロジェクトに展開していくことが求められるのである。

 ただし、問題点として、このような原価計算を実施したとしても個別プロジェクト管理としては不十分なので、早急にプロジェクト別の製造原価を把握できる体制が求められる。しかも、このような試みを行う場合、仕掛品の把握を「担当部署からの仕掛プロジェクトの申請」によって把握し、それらのプロジェクトの工数やコストを集計して仕掛品の総額を計算するようなケースもあるため、仕掛品の網羅性に問題があるからだ。つまり、担当部署からの仕掛プロジェクトの申請に漏れがあった場合には、財務諸表に反映されない簿外の仕掛品が存在してしまうことになる。これを防止するためにも、すべてのプロジェクトについて原価計算を実施するとともに、各プロジェクトがいつ始まっていつ終了したのか、について網羅的に把握する体制が必要になる。

(後編は5月22日掲載予定です)


木村氏
筆者紹介

木村忠昭(KIMURA Tadaaki)
株式会社アドライト代表取締役社長/公認会計士
東京大学大学院経済学研究科にて経営学(管理会計)を専攻し、修士号を取得。大学院卒業後、大手監査法人に入社し、株式公開支援業務・法定監査業務を担当する。
2008年、株式会社アドライトを創業。管理・会計・財務面での企業研修プログラムの提供をはじめとする経営コンサルティングなどを展開している。

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