リアルタイムと聞いて思い浮かぶキーワードのひとつに「リアルタイム経営」がある。リアルタイム経営を実現するために開発されたのが、リアルタイムの企業システム、すなわち「ERP」だ。ERPのトップベンダーであるSAPが、新しいクラウド型アプリケーションのパブリックベータ版である「12sprints」(コードネーム)を公開し、話題を集めている。
その理由は、会議における意思決定を支援することにより、これまで難しいとされていたホワイトカラーの生産性向上に寄与することを狙った、ユニークな「Collaborative Decision Making (CDM)」のためのツールであるからだろう。
「我々はリアルタイムのDNAを持っている」--そう話すのは、SAPジャパン、イノベーションデザイン&ディベロップメント担当兼Co-innovation Lab Tokyo(協働研究開発センター)の馬場渉氏だ。ウェブの世界が最近リアルタイムになって賑やかだが、馬場氏は「企業システムやウェブといった、それぞれのカテゴリ内でのリアルタイムは時代遅れになる」と考えている。
ERPの中はリアルタイム。ウェブはリアルタイム。企業内コラボレーションはリアルタイム。電話による通話だけはリアルタイム。このような個別のリアルタイムではなく、カテゴリを超えてリアルタイムにインタラクションする。それを実現できなければ企業システム全体の真のリアルタイム、つまり「Real Real-time」は実現できないと考えているのだ。
今回は馬場氏に、SAPの12sprintsが提供しようとしているリアルタイムの価値、企業経営に寄与する価値について聞いた。
「Google Waveの対抗馬」ではない
12sprintsが公開された直後、メディアの多くは12sprintsを「Google Waveの対抗馬」と位置づけた。しかし、Google Waveは「コミュニケーション向け」、12sprintsは「業務支援向け」として棲み分けられ、そもそも競合関係にないというのがSAPの主張だ。しかも、SAPは2009年秋にGoogle Wave用の業務コンテンツを提供しており、どちらかと言えば協業関係にある。