PayPalが学生向けプログラムを開始するらしい。これは親のアカウントのサブアカウントとして子供用口座が開設され、デビットカードが発行される。残高はオンライン、もしくは携帯電話で親の口座から子供の口座へ移動できる。子供はこの口座でオンライン決済もできるが、発行されるデビットカードを使ってリアルの店舗でも買い物ができるし、ATMで現金を引き出すことも可能である。
この口座を開設することで、親は子供がどんなお金の使い方をして、きちんと予算管理をしているか監視できるようになる。つまり、若い時からお金が管理できるように勉強させるためのツールとして使えるということである。子供に限定的な資金を与えるという意味では、カード会社が発行するプリペイドカードなどですでに実現されているが、今回のPayPalのケースは2つの点で面白い。
学生時代からPayPalを使うということ
1つには、PayPalのような銀行ではない事業法人が、まるで銀行のような決済サービスを学生に対して提供している点。従来のPayPalユーザーは、もともと銀行の金融サービスを利用していて、オンライン決済における利便性を感じてPayPalの利用を開始したはずである。それに対して、デビットカードなどリアル決済も含めてPayPalのサービスを学生時代から使い始めると、彼らにとってはPayPalこそが金融サービスということになる。
日本でも資金決済法が改正され、銀行でなくとも内国為替を行えるようになった。PayPalなども日本市場への本格参入を見据えているようであるが、こうした動きは金融サービスの提供主体に関する固定概念を崩す可能性がある。
最近、インターンシップの学生などと話していると、彼らは驚くほどに金融サービスというものを使っていない。まぁ自分もそうであったが、状況にそれほどの変化はないのである。そう考えると、彼らが最初に使い始める金融サービスこそが、彼らにとっての金融サービスであり、「金融サービス=金融機関」という固定概念はないのである。
学生にもお金の管理をさせること
擬似通貨でお金の管理といえば、自分の世代だと子供銀行券など思い出してしまうのであるが、今やオンラインでの資金管理ができてこそ、お金の管理である。親の世代よりも長生きである我々、そしてさらにその先の世代は、親と同じ時期から老後の備えをしても間に合わない。それ故に、お金の管理に関するスキルや感度をより早い時期から学ばせることは必須である。
若い時分から老後のことを考えるのは無理ではないかと思うが、急速に少子化が進む日本においては、非常にリアリティのある話である。ちなみにインターンシップで接している大学3年生の場合、貯金は全然していないということであった。どうにも長い人生というのは、国にとっても個人にとっても厄介なものである。
さて、話は変わりますが、過去10年間封印していた創作活動を開始し、本年9月1日から個展を開催することとなりました。もし宜しければ是非お越し下さい。詳細はコチラ。
筆者紹介
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。
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