ブラック・フライデーとは、謝肉祭の翌日の金曜日のことで、米国では真夜中からショッピングに繰り出すほどに買う側も売る側も気合が入るものらしい。ロイターの伝えるところによると、今年の年末商戦の客足は去年より伸びるだろうとのこと。
また、eBayが面白い画像を公開している。これは、米国において発生したeBay上のオンライントランザクションを時間の経過とともに光の点として表示していくものだ。
ロイターの伝える写真とeBayのこの綺麗な映像を見ていると、ドバイの問題はあるにしても、徐々に景気も上向くのではと感じなくもない。
しかし、一方でこのショッピングシーズンに先立ち、米連邦準備銀行(FRB)が映画館の広告を通じてクレジットカードの賢い使い方を指南するのだそうだ。要は使い過ぎて借金をしすぎるなということである。賢い使い方というほどのことではないが、米国の当局自身が米国を過度な消費社会としてしまったことに責任を感じているのだろう。
実際、先ほどの年末商戦を伝えるロイターの記事の中で「借金はしたくないし、自分がどれだけ使ったかわかった方がよいから」という理由で現金でしか買い物をしないとインタビューに答える消費者を紹介している。このコメントから思い出されるのは2008年、米国最大のインターネット専業銀行であるING Directが行った「We the Savers」キャンペーンの宣言文である。
その第一が“We will spend less that we earn”、つまり「稼ぎ以上には使わない」というもの。あまりに当たり前のようでありながら、いまや米国では政府も一緒になって同じメッセージを映画館で伝えないといけない状況にあるのである。
さて、そのINGであるが、大元はオランダの金融グループであり、その米国ビジネスとしてING Directを展開している。ING Directは先に紹介したキャンペーンが示す通り、堅実なアメリカ人を応援する銀行なのだが、その親のINGグループはリーマンショックの煽りで事業の再編をオランダ政府から求められており、2013年までにING Direct USAを売却するそうだ。なんとも皮肉な話である。
筆者紹介
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。
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