Javaに関連したOracleとGoogleの訴訟のニュースを見ていると、その詳細は分からないにしても、こうした争いそのものに違和感を感じる。これはJavaというオープンなプラットフォームに関する争いであり、GoogleはOracleによる提訴をオープンソースに対する攻撃だと批判している。
つまり、あまり訴訟という言葉が馴染まない領域で、大手企業同士が争っているという事実に違和感を感じるのである。
オープンプラットフォーム、あるいはオープンソースなどにおける「オープン」という概念は、一定のルールのもとに知的資産を開示して行くことで、より多くの協力者を得てイノベーションを加速していく仕組みである。この「オープン」戦略は、仮に一人一人の力には限りがあっても、より多くの知を集めることで大企業をも凌駕するエネルギーを持ちえることを実証してきた。
Linux、MySQLなどのプラットフォームレイヤからSugarCRMなどのアプリケーションレイヤまで、オープンソースはエンタープライズ領域でもさまざまに活用されている。一方で、そうであるが故に、企業間の権益に深く関わることとなり、ある特定企業の影響力が強まれば、訴訟リスクも高まることになる。LinuxにまつわるSCOの訴訟や、今回のJavaに関わる訴訟がまさにそれに当たる。
エンタープライズ向けソフトウェア製品であっても、その中に多くのオープンソースが活用されている。そのため、しばしばそれらが正しいライセンス規定に基づいて利用されているかを確認すること自体が大変な負荷となり、それ自体サポートするソフトウェアやサービスが出現することとなった。
このように、オープンソースの成功が、逆にオープンソースの良さを失わせるというのは実に皮肉な話である。ソフトウェアビジネスの領域は、今でも集約化と大規模化が進行しつつある。
そうした中ではオープン戦略よりも、クローズド戦略で顧客を囲い込むことでも十分にスケールメリットを得ることができるようになりつつある。しかし、それが本当にユーザーのためのイノベーションを継続するのに最適なのか。改めて「オープン」戦略の必要性を認識すべきときに来ているように思う。
さて、今年も飯田哲夫個展『Ambivalent Images II』を開催します。詳細はこちらをご覧下さい。本文と全然関係ないようでごめんなさい。なお、こちらオープン戦略なので入場無料です。
筆者紹介
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。