クラウドコンピューティングモデルに関して、ITベンダーや「専門家」がよく言うことの1つは、ここ何年かの経済危機によって、IT運用コストの節約のためにクラウドを利用する企業が増えている、ということだ。非常に多くの人が、以下のような見解を述べている。
クラウドコンピューティング、あるいはSaaSへ移行する動きは、経済危機の間に加速した。
次のような見解もある。
現在、クラウドコンピューティングへの注目が高まっているという事実は、偶然とは思えない。PicanolのITマネージャーであるTommy Van Roye氏は、「経済危機がクラウドコンピューティングの採用を促しているのは明白だ」と説明している。
こうした見解の根底にあるのは、「予算の縮小によって、あらゆる企業がクラウドコンピューティングの可能性に目を向けるようになった」という考えのようだ。これは、「ITはどういうわけか、クラウドモデルで運用した方が安くなる」ということを示唆しているように思える。
確かに、この理論が当てはまる場合もあるだろう。しかし筆者は、不況が原因でクラウドへの関心が高まっているという考えは的外れだと思う。企業がクラウドの検討を始めている理由は、究極的には新興企業がクラウドを採用する理由と全く同じだ。すなわち、キャッシュフローである。キャッシュフローと、より流動的な「従量課金制」モデルが実現する俊敏性だ。
筆者の見解では、クラウドの普及と同時期に景気が回復しているという事実は単なる偶然にすぎない。
考えてみれば当然のことだが、IT組織がどれだけの財源を持っていようと、親会社や業界にどれだけ成長の見込みがあろうと、IT組織が抱えている問題は、予算とは何の関係もない問題であり、資本集約型モデルと大いに関係のある問題だ。
従来のITでは、アプリケーションを構築または購入(ほとんどの場合、何らかのライセンス料を前払いする必要がある)した後、そのアプリケーションを実行するインフラストラクチャを購入する。その後、そのアプリケーションのトータルコストの大部分を前金で支払う。その投資の効果を得られるかどうかは、すべてそのアプリケーションの成否次第ということになる。
CNET Japan 特別企画 -PR-
ITジャーナリスト佐々木俊尚氏と日立のキーパーソンが語る!
2010年企業クラウド元年 ビジネスニーズが企業のクラウド化を加速する