チップのギガヘルツ競争が再燃しつつあり、IBMのBrad McCredieは、臨戦態勢を整えている。
プロセッサメーカー各社にとって、チップの消費電力を抑えながら、その性能を実際に向上させ、しかも動作周波数を引き上げることは困難になった。その結果、IntelやSun Microsystems、Advanced Micro Devices(AMD)は、例えば、1枚のシリコン上に複数のプロセッサコアを搭載したり、スレッドと呼ばれる一連の命令群を同時に実行することなど、他の特長を強調するようになっている。
しかしIBMは今月開かれた「International Solid State Circuits Convention(ISSCC)」で、現在開発を進める「Power6」プロセッサの動作周波数が最低でも4GHzになると発表した。これは、Intelが2004年にPentiumで達成しようとして失敗したのと同じ速度だ。
Power6の設計主任を務めるMcCredieは、1991年にIBMのメインフレーム部門で働き始めた。その後同氏は、テキサス州オースティンにあるPowerプロセッサの開発チームに移り、IBMのUNIXサーバの心臓部の開発に携わってきた。IBMは近年、Sun Microsystemsが長きにわたって首位を維持しているUNIXサーバ市場でシェアを伸ばしたが、今後もシェアを伸ばし続けることができるどうかは、McCredieの双肩にかかっている。
最低でも4GHzという動作速度を実現できれば、IBMは他社をリードすることになる。だが、同社はPower6の開発で壁にぶつかっている。2004年に同社はPower6を2006年に、また一段と高速な「Power6+」を2007年にリリースすると発表していた。しかし、McCredieによれば、現在Power6のリリースは2007年の予定になっているという。
McCredieは、CNET News.comのStephen Shanklandの取材に応じ、ISSCCのために書き下ろした論文(共著)について話をした。
--IBMにとって、今回のカンファレンスでのビッグニュースは何でしたか。
メインテーマは、Power6システムの設計でした。一般への提供までにはまだ1年ありますが、われわれがこのカンファレンスで伝えたかったのは、Power6の開発は現在もスケジュール通り進んでおり、今後もこのペースを守っていく、ということです。われわれは2001年にPower4を、次いで2004年にPower5をリリースしました。そして、Power6を2007年にリリースする計画は順調に進んでいます。今回のカンファレンスでは、パス2(第2世代のプロトタイプ)の結果を、パフォーマンスの数値を挙げて示しました。われわれは、高い動作周波数という目標に到達しつつあります。
--競合他社の多くは、ギガヘルツ競争には見切りをつけたと言っていますが。
高い動作周波数は、とても強力なメッセージとして世の中に広まっています。高い動作周波数というものから遠ざかろうとしている人々もいるかもしれませんが、われわれは今でもそれに注力しています。われわれは、消費電力が非常に大きい回路や、ステージ数を20、30、40へと増やしたパイプラインという方向には向かいませんでした。そういった方向に進めば、動作周波数を上げるためにパフォーマンスを犠牲にすることになるからです。
--1命令を多くのさまざまなステップに分割し、それらに見合う数にまでパイプラインのステージ数を増やすことで、複数の命令を同時に処理することができるようになります。
パイプラインのステージ数は、命令の実行が開始されてから、アプリケーションもしくはユーザがその結果を受け取るまでの遅延の指標となります(ステージ数の多いパイプラインは)食器を洗うためのシンクを、洗浄用、1回目のすすぎ用、2回目のすすぎ用・・・と複数用意するようなものです。動作周波数を上げるためにパイプラインのステージ数を増やせば、命令の処理時間が長くなってしまうのです。動作周波数を倍に上げたところで、パイプラインの数が倍になっているのであれば、パフォーマンスはそれほど向上しないのです。われわれはPower6の動作周波数をPower5の2倍に引き上げましたが、パイプラインのステージ数はPower5の場合と変わっていません。