「ITユーザーとしてEMCが抱える課題は、EMCの顧客が抱えている課題と同じだ。だからこそ自らその課題を解決すべく取り組みを進め、ベストプラクティスとして顧客にも提案できるようにしたい」。こう話すのは、EMC IT部門 ビジネス最高情報責任者(ビジネスCIO)のMichael Montoya氏だ。来日したMontoya氏に、EMCが実践する自社のIT戦略を聞いた。
EMCでは、景気の後退という厳しい状況やグリーンITの推進といった課題に対応しつつ、クラウドコンピューティングなどの新しいテクノロジを導入し、戦略的に他社と差別化できるようなITの構築を目指している。この基本路線に沿った新たなIT戦略を2009年1月より進めているが、「ビジネスCIO」というMontoya氏の役職も、この戦略を実行するために新たに設けられたと言っていい。よりビジネスに直結したIT戦略を実践するのがMontoya氏の役目だ。
「優先すべきことは、運用コストを削減すること、ITを提供するスピードを向上させること、将来を見据えたアーキテクチャを作り上げること、従業員の生産性を向上させること、そして自社のITで実証済みのソリューションを提案していくことだ」とMontoya氏は説明する。
こうした戦略の中で見えてきた将来の姿が、クラウドに対応したシステムだという。まずEMCでは、データセンターを仮想化してインターナルクラウドを実現し、その上で外部サービスも含めたIaaS、PaaS、SaaSを導入しつつ、完全なクラウド環境を構築するという。
では、EMCはどのようなステップで完全なクラウド化を実現するのだろうか。「まずはインターナルクラウドが実際に動作するかどうかテストすることから始める。これはテクノロジをテストするだけだ。難しいのはここから先のステップで、ビジネスニーズに適したクラウドを構築し、最終的にはクラウドのためのポリシーやガバナンスを作り上げなくてはならない」とMontoya氏は説明する。
クラウド化に向けて採用する製品は?
EMCでは現在、サーバの仮想化、ストレージおよびネットワークの仮想化、管理と自動化、仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)、そしてクラウドという分野にわけて、プライベートクラウド環境の構築に向けたテストを行っている。
サーバ仮想化の分野で利用しているのは、クラウドOSの「VMware vSphere」、そして仮想マシンのバックアップツール「VMware Consolidated Backup」とデータの重複除外ツール「EMC Avamar」との組み合わせだ。ストレージおよびネットワーク仮想化においては、ストレージとして「EMC Symmetrix V-Max」を利用し、仮想環境でサーバとストレージ間のパフォーマンスを自動最適化するパス管理ソフトウェア「EMC PowerPath/VE」と、ストレージ筐体内で情報をレベル分けして保存管理するILMのためのソフトウェア「FastEMC」を採用している。
管理と自動化のためには、仮想インフラのキャパシティ最適化ツール「VMware vCenter CapacityIQ」と、物理環境と仮想環境をシームレスに統合管理するソフトウェア「EMC Ionix」を採用した。VDIには、デスクトップ仮想化ツールの「VMware View 3.1/4.0」と、サーバに「Cisco UCS」、そしてRSA関連ソリューションを採用。そしてクラウドには、プロビジョニングツールの「VMware vCenter Lab Manager」とクラウド用ストレージの「EMC Atmos」を活用している。