エンタープライズ環境でWeb2.0が成り立たちにくい理由
その一方で、Web2.0ブームやM&Aによる業界の変動など、KMを取り巻く外部環境も大きく変化している。爆発的な情報量の増加が生産性を低下させ、組織・社内外を問わずさまざまなコミュニティに関わり、セキュリティや内部統制強化は企業の最優先課題となった。
「当社に対する期待がナレッジの枠を超え、情報共有基盤全体に広がり、人・情報・ナレッジの全社的、統合的管理が不可欠になってきた」と語る砂金氏は、扱う情報量が肥大化するに伴い、情報の質の低下は避けられず、今後、情報品質を向上させる何らかの総合的な取り組みが求められているという。
そんなビジネス環境の中、エンタープライズ2.0ブームが起こった。エンタープライズ2.0とは、Web2.0の潮流をエンタープライズ分野に応用する際、なんらかの創意工夫を経て取り組むエンタープライズITの方向性のこと。
その流れを受け、blogやSNS、WiKiなどを自社内に導入しはじめた企業は数多いが、今のところ際立った成功事例に出会うことは稀だという砂金氏。「目的が明確でないまま、流行しているというだけで導入しても、全社的な盛り上がりも見せずに衰退してしまった例や、blogやSNSはストック情報としての管理には弱く、結局はごみの山と化して情報が役立てられなかったなどの失敗例は多い」
エンタープライズ環境でWeb2.0的な考え方が成り立たちにくいのは、そのユーザー層の違いによるところが大きいからだという。無限のユーザーを対象とするWebに対して、エンタープライズ環境のユーザーは有限で、その中心的世代は30〜40歳代と年齢層が高く、ロングテールではない8割がマジョリティという参加者が対象となる。「まずこの違いを認識しなければならない」(同氏)
エンタープライズ2.0へのステップ
また、企業がWeb2.0的な要素を取り入れたエンタープライズ情報基盤を検討し始めている理由は2つある。1つは部門で導入したトライアルを全社展開したい場合。2つ目は既存の情報基盤の刷新時にエンタープライズ2.0も取り入れたいといった場合だ。そのどちらか、あるいは両方が背景にあるケースが多いという。
しかし砂金氏は、新しいことに飛びつくイノベータ、流行に敏感なアーリーアダプターのトライアルを経て、実利主義者のアーリーマジョリティでオーソライズされる間に、深い溝(キャズム)が存在するという問題を指摘する。
「このキャズムを超えなければ、2.0も利用が広まることなく、やがて消え行く運命となる。それは現場でも情報システム部門でも同様」(同氏)
初期の成功を本格的なビジネスへ結び付けるためには、その実利主義者の関心を惹く仕掛けが必要だという。そのため、これまでの経験から、普段使い慣れたものへ適用することで、使わざるを得ない状況に置くことがキャズム克服のコツだという。例として、電話帳や社内の内線表など使用頻度が高いものへSNSなどを適用することで、守旧派にも自然と利用されるようになるという。
そして、セッションの最後に砂金氏は、「社内情報インフラを全て統合することは不可能だが、最低限、アクティビティログとメタデータ、およびアイデンティティの3つはひとつの共通基盤で統合管理すべき」という同社の基本となる考え方を示し、講演を終了した。
リアルコム製品に共通する世界観

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