「儲ける・遂行する・防御する」を実現する検索プラットフォーム
ファストサーチ&トランスファ(ファスト)が提供する検索プラットフォームは、一般によく見られる検索フォームにキーワードを入力し、サーチボタンをクリックすることで検索結果が表示されるという形式だけではない。清水氏は先に挙げた分布図の中から、プレミアムコンテンツ配信とエンタープライズEコマースを「儲ける(=利益の創出」」、インフォメーションマネジメントとコンプライアンスコンテンツ統制を「遂行する(=情報の活性化)」、探知・監視執行とコンプライアンスコンテンツ統制を「防御する(=リスク管理)」とカテゴライズし、それぞれの導入事例を紹介した。
利益の創出と情報活性化における事例として楽天が挙げられた。膨大なデータを持つ楽天では、FASTの導入によってデータベースサーバの削減に成功し、コスト削減を実現した。さらに、ユーザーの要求に正確に応じて情報を提供する検索と的確に商品カテゴリ情報の提供を可能にするナビゲーションによって、顧客利用数3倍を達成し売上げ増に貢献した。また、1秒あたり1,000QPSという銀行のオンライン処理量に相当するリクエストに耐えられるアーキテクチャを実現し、検索速度の向上と将来的な検索数増加に応えられる環境も整えられた。
同様にヨドバシカメラでも、適切なナビゲーションによる顧客誘導を可能にしたほか、商品検索結果に対しても、在庫情報、ポイント情報等の異なる属性の情報を統合した表示を実現している。
ここでいう正しい検索結果の提供とは、与えられたキーワードに対して適切な応答をするのはもちろん、検索結果が表示されない「ゼロヒット」をなくすことが特に重視されている。また適切なナビゲーションとは、大量の検索結果の中から少ないクリック数で目的の情報に行き着けるようにすることが意識されている。いずれもユーザーのストレスを軽減し、Webサイトからのユーザの離反を逓減させる効果があるものだが、従来の検索技術では応えられていなかった部分だ。
さらに、検索結果にビジネスロジックを組み込むことができるのも特徴のひとつだ。同列の商品ならばタイトル順や登録日順ではなくランダムに表示することで出展者に公平感を持たせることや、在庫の多い商品や利益率の高い商品を優先的に表示して積極的にアピールする、より利益率を高めていくといったビジネスロジックを取り込むことで、よりよい結果が得られるという。
また、情報活性化やリスク管理の分野では、リアルタイムに寄せられ、更新される情報をリアルタイムに検索するためのメッセージングアプリケーションとして、ロイター社が活用している。また、発表した情報の二次利用を監視する知的財産パトロールという面でも、インターネット上の情報から自社ニュースの活用状況を把握することにこの検索システムを利用している。
このほかにもリスク管理における活用としてはアジアの警察機構がWeb上の違法な画像データリストと似た画像を使用しているサイトの検知に利用し、警告と共に摘発に役立てているなどの例もある。「検索はすでに単純にキーワードを検索フォームに入力して結果を得るだけというものではなくなっている」と清水氏は語る。
現在、メディア業界ではよりオンライン広告をはじめ、よりユーザーにマッチしたコンテンツの表示や効果的なコンテンツの提供方法が求められている。ユーザーにマッチした内容、わかりやすいナビゲーション、要望に応じるアラートやトラッキング機能の提供といったものが顧客へのアピールになり、利益の創出につながる。
BtoCのシーンだけでなく、企業内で蓄積されているデータを対象とした検索などでも、検索者の意図を正確に理解することで様々な効果が期待できる。顧客クレーム、あるいは製品トラブル時への迅速な対応によって損害を防ぐことや、企業内の情報を分析することでのコスト削減、また社員の行動を分析、管理することで内部統制にも活用できるはずだ。
「今後、情報活性化の分野として異言語圏の顧客・商品マスターなどの統合を実現する『グローバルマスターデータマネージメント』を、また情報活性化と利益創出を併せ持つものとして、ウェブ上の商品データを集めて自動的に商品比較検索等が実現できる技術である『インフォメーションフュージョン』を、さらに利益創出としてサーチと統合されたサーチ広告統合プラットフォームである『Web Ads』を提供する予定だ」と清水氏は語り、ファストが今後も積極的に検索におけるイノベーションに取り組む予定であることを強調した。