ボストン発--Googleのエンタープライズサーチ部門を率いる人物によると、企業向け検索市場は従業員の要望を満たすことよりも技術の改善に重きが置かれているため、その成長が阻まれているという。
個人ユーザー向けの検索エンジンで世界的に有名なGoogleは、企業顧客にもサービスを提供していきたいという壮大な野望を抱いている。先週、同社は企業向けの2つの検索アプライアンスを発表し、多くのファイル形式に対応した検索技術の提供を目的としたサードパーティとの提携も明らかにした。
Googleのエンタープライズサーチ部門でゼネラルマネージャーを務めるDave Girouard氏は米国時間4月24日、ボストンで開催された「Search Engine Meeting」カンファレンスで講演し、企業向け検索市場の規模が個人向け検索市場のおよそ10分の1にとどまっている理由を説明した。
同氏によると、個人ユーザーは容易に検索エンジンを切り替えることができるため、ウェブ検索ベンダーの間では「自然淘汰」が頻繁に起きているという。これは、ユーザーのニーズを満たすことに成功したベンダーしか個人向け市場では生き残れないことを意味する。
対照的に、企業向け検索ベンダーは、製品ユーザーとの直接的な交流がない。企業向け検索製品の販売過程においては専門家が仲介役として動くのが一般的で、彼らが従業員のエクスペリエンスを考慮するとは限らない。
「われわれの業界は(Googleも含め)、エンドユーザーに十分な価値を提供できていない。ユーザーの望むものではなく、技術に焦点をあててしまう傾向がある」(Girouard氏)
その結果、自社ネットワーク上に散らばる情報の中から必要なものを探し出す際に、検索を利用するユーザーはほとんどいないと、同氏は指摘した。
検索分野におけるGoogleの主なライバルは、YahooとMicrosoftだ。また同社は企業向け検索市場においては、IBMやOracleをはじめとする大手のほか、検索に特化した複数のベンダーとも競合している。
Girouard氏は、企業向け検索市場の拡大を阻んでいる製品設計の失敗事例の1つとして、ユーザーインターフェースを挙げた。
研究者および検索ベンダーは、自然言語処理のような様々な技術を駆使して検索機能を向上させようと努力している。自然言語処理とは、「Where do I find the company expert on search technology?(社内の検索技術の専門家はどこにいるのか?)」のような質問をコマンド行に入力できるようにする技術だ。
一部の新興企業は既に企業向け検索の改善に取り組んでいる。例えば、Sidereanは検索結果の左枠にナビゲーションの説明を表示し、エンジンが検索結果をどのように取得したか、またクエリに対する異なる検索結果をどこで見つけられるかといった情報を提供している。またZoomInfoとTrovixは、履歴書のような情報を抽出することに特化した検索ツールを開発した。
しかしGirouard氏は、人々は企業ネットワークを検索する際も、通常のウェブ検索と同じく、2〜3のキーワード入力で済ませたがっていることを示す調査結果に繰り返し言及した。ほとんどの企業で使用されている検索ソフトウェアは、ユーザーインターフェースが複雑で「魂を失っている」というのが、同氏の考えだ。
「会社の従業員は、個人ユーザーでもある。検索は、企業の全情報にアクセスするためのヒューマンインターフェースになる可能性を持っている」(Girouard氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ