企業における「情報検索」に対するニーズの高まりを受け、国内外問わず多くのベンダーが「検索」という機能を前面に出した製品やソリューションの提供に名乗りを上げ始めている。前回の記事では、Enterprise Search Platform(ESP:企業内統合検索基盤)の概念や、必要とされる要件などについて紹介した。今回から2回に分けて、ESP市場において先進的な取り組みを行っている、アクセラテクノロジ、ウチダスペクトラムの2社を取り上げ、両社の考えるESPの条件や今後の展開についてまとめる。
アクセラの考える「ESPの5つの要件」とは
2001年に富士通からのスピンオフで設立されたアクセラテクノロジは、現社長の進藤達也氏が、富士通社内で開発していたスーパーコンピュータ向けの全文検索技術を核に、企業の情報活用のためのテクノロジ、ソリューションを提供しているベンダーである。
この全文検索技術は「Accela BizSearch」と呼ばれる製品として提供されている。BizSearchを基盤とするソリューションは、eコマース向けの電子カタログ、企業のナレッジマネジメント、コールセンターシステムなど多岐にわたり、国内での導入実績は800サーバを越えたという。
企業内検索への関心が高まりつつある昨今の状況について、進藤氏は「プレーヤーが増えることで市場が盛り上がるのはありがたい」としながら、「ただし、我々には長期にわたって洗練してきた国産の検索技術と、約5年の間に蓄積された検索による情報活用に対してのノウハウがある」と自信を見せる。
会社設立当初、進藤氏が考えていた検索技術の適用分野は、eコマース関連、企業内情報の検索、そしてグーグルやヤフーなどが取り組むインターネット検索の、主に3つの分野だったという。
「当初はeコマース関連が大きく伸びるのではないかと予想したが、いわゆるネットバブル崩壊などの要因で、そちらは思ったほど大きく伸びなかった。一方で、企業内検索に対するニーズは、電子ドキュメントの増加や、キーワード検索に対するユーザーのリテラシ向上などの流れもあって、ますます拡大している」(進藤氏)
現在、アクセラテクノロジでは、特に企業内検索にフォーカスしたビジネス展開を行っている。
進藤氏は、企業に対する検索システムの導入実績を踏まえつつ、企業内検索に必要とされる要件は「既存環境(ストレージ)の活用」「検索レスポンスの早さ」「ポータル化」「アクセス権の管理」「漏れのない検索結果」の5つであるという。
「既存環境(ストレージ)の活用」は、業務の中でデータが蓄積されるストレージの環境を変更せず、既存環境にアドオンする形で検索システムを組み入れるということだ。あえて「情報共有用」にデータを別途ストアする環境を作るのは、非現実的でありナンセンスであるという。
また、「検索レスポンスの早さ」については、「1秒以内にレスポンスがあるべき」と明確な指標を提示する。情報活用を目指して新規に導入したシステムであっても、ユーザーに利用されなければ意味がない。検索スピードは、ユーザーに使ってもらえるシステムになるかどうかの最大のポイントだとする。
「ポータル化」とは、企業内のさまざまなサーバ上に分散して存在する情報を、ユーザーがその存在場所を意識せずに、「一元的に」検索できるようにするという意味だ。BizSearchでは、代表的な文書ファイル(Word、一太郎、OASYS、PDFほか)、各種RDB、各種グループウェア、CADファイルなどに対するインデックス付けが可能なゲートウェイを用意しており、さらに各企業独自のシステムに対するゲートウェイの開発にも対応する。
「アクセス権の管理」については、「いわゆるグーグル、ヤフーのようなインターネット検索との最大の違い」として、その重要性を強調する。BizSearchでは、検索用のインデックスに対して既存システムのアクセス権限を反映して結果表示を行える。「企業内の検索において、“セキュア”であることは、当たり前。われわれは当然のこととして、それに取り組んできた」(進藤氏)とする。
最後の「漏れのない検索結果」という点も重要だ。これまで、別々の業務システムで使われていた「情報を探し出す」ための仕組みを、「検索」という技術で一本化しようとする場合には、「より有益な情報を探し出す」ことに加えて、「必要な情報を漏らさず検索できる」ことも重要になる。例えば、ある条件に該当する見込み客をESP上の検索で探し出したいといったニーズがある場合、万が一検索漏れがあれば、それは機会損失へとつながってしまう。BizSearchでは、理論上検索漏れがなく、キーワード辞書のメンテナンスも必要がない点でメリットの大きい「N-gram方式」と呼ばれる検索ロジックを、日本語環境向けにチューニングした上で採用しているという。