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ZDNet Japan ソリューションフォーラム 2006 特集

株式会社アイ・ティ・アール

今後のIT投資の主役になる「ナレッジワーカー・インフラ」とは

神永裕人(イエローリポーツ)
2006/12/01 10:00

企業内のビジネスコンテンツが急増する中で、コンテンツ管理やナレッジワーカーの生産性向上に、近年多くの企業が関心を寄せている。フォーラムの冒頭を飾る基調講演では、IT調査会社である株式会社アイ・ティ・アールのシニア・アナリスト、上村陽子氏が「ナレッジワーカー・インフラの再考 〜日々の業務効率を高めるための4つの方策」と題し、ナレッジワーカーが業務を進めていく際の基盤となるナレッジワーカー・インフラについて、その現状やあるべき姿へ向かうための方策、ナレッジワーカー・インフラ構築に関わる製品動向などを幅広く紹介した。

コンテンツ管理と知識の共有に多くの企業が高い関心

株式会社アイ・ティ・アールシニア・アナリスト上村陽子氏 株式会社アイ・ティ・アール
シニア・アナリスト
上村陽子氏

 講演の冒頭で上村氏は、所属するIT分野の調査会社アイ・ティ・アールが毎年秋に実施している「T投資動向調査」の集計結果を提示した。IT投資が2003年を底に回復基調にある中で、今後、具体的な投資を実施していきたいテーマとして「全社的なコンテンツ管理インフラの整備」、「情報・ナレッジの共有・再利用環境の整備」の2つを70%以上の企業が挙げていること、そしてこの2つのテーマが突出して多いことを紹介した。実際に提示されたのは昨年のデータだったが、今年の調査でも同様の傾向を示しているという。

 上村氏自身、クライアント企業との対応の中で関心の高さを実感しているようで、「この2つは、今、一番ホットなテーマ」と見ている。最近のクライアント企業からの問い合わせ内容を整理してみると、ワークフローの改善や内部統制強化に伴う業務プロセスの可視化に関する「業務プロセスの改善」、オフィスレイアウトやフリーアドレスといったオフィススペース活用に関する「ワークスタイル変革」といった内容と並んで、「ナレッジマネジメント」に対する問い合わせが急増しているという。

 ナレッジワーカーがコンテンツをいかにうまく活用して、業務を効率的に進めていくかという取り組みがナレッジマネジメントである。「この部分を何とかしないと、と多くの企業が考えているのは確か」(上村氏)。

ナレッジワーカー・インフラ整備はまずプロセス化への取り組みから

 次に、ナレッジワーカー・インフラのイメージ把握のために、ナレッジワーカーが関わっている業務内容を分析した。これによると受発注処理や間接部門の定型業務といった「定型的・定常的」な業務以外はシステム化されずに残ってしまっているという。イベント企画、研究開発、突発的な事故処理、経営戦略立案、競合情報の調査、提案資料の作成、問い合わせ対応などといった、ナレッジワーカーが本来担うべき業務については、一定の作業手順が決められない、発生する頻度も低い、そして対コスト効果が判断しにくいといった理由から、システム化への取り組みが遅れていたのだ。

 しかし上村氏は「こうした業務を支えるITシステムがナレッジワーカー・インフラであり、これを利用する人数は、定型的・定常的処理を行うシステムと比べて圧倒的に多く、その影響力も大きい。こうしたインフラをすべての従業員に提供することは極めて重要なことである」と強調した。

 そして、ナレッジワーカー・インフラを整備していく上で不可欠な取り組みとして、上村氏は「プロセス化」と「ナレッジ化」の2つをキーワードに挙げた。プロセス化とは、誰でもできるように業務を標準化するということ、ナレッジ化とは属人的な知識を全員で共有できるようにするということだ。

 まず、プロセス化から取り組みを始め、できないところをナレッジワーカー・インフラでサポートするということになる。このとき重要になるのがナレッジ化という視点である。上村氏によるとナレッジ化の方法として4つの方向性があるという。ある作成者が作ったコンテンツを他の人が利用する「コンテンツの作成と再利用」、複数の作業者がコンテンツ更新に関わる「コラボレーション」といった従来からの方法に加え、コンテンツを誰が参照したかなどのメタ情報を付加していく「付加価値の追加と成長」、組織の命令系統を超えた情報交換を可能にする「ソーシャル・ネットワーク」という新しいナレッジ化の仕組みを紹介。後者2つの機能もナレッジワーカー・インフラに組み込んでおくことが、今後求められるようだ。

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