第4回 層構成により有用性が高まるEA

近藤 佳大(みずほ情報総研) 2005年04月22日 10時00分

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 エンタープライズアーキテクチャ(EA)が従来のシステム開発・改善手法と異なるポイントの一つは、ビジネスとITの連携を目指して両者(ビジネスとIT)のアーキテクチャを一つの体系として扱おうとしていることにある。すなわち、業務の全体像を示す「設計図」とシステムの全体像を示す「設計図」を、別々にではなく統一的な視点から提供しようとする。

 従来の手法では、ITを経営にとっての単なる手段と捉えていたり、システム開発のためには最低限業務を把握する必要があると考えていたりするなど、視点がビジネス側かシステム側かに偏っていることが多かった。前者はビジネス側の視点からのみシステムを捕らえるもので、ITの可能性を充分に引き出すことは難しい。後者はシステム開発の視点から現行のビジネスを見ているのみで、業務そのものの改善可能性を追求できない。

 それに対して、EAはビジネスの視点にもシステムの視点にも偏ることのない魚眼レンズのような視野の広い眼を提供してくれる。それは、EAがアーキテクチャを複数の層に分け、それぞれの現状や理想像を描くという方法をとっているからである。政府のIT戦略本部が採用した「業務・システム最適化計画策定指針(ガイドライン)」では、「ビジネス」「データ」「アプリケーション」「テクノロジー」という4層にアーキテクチャが分けられている。ビジネスの視点は主に最上層のビジネスアーキテクチャで取り扱われる。一方のシステムの視点は「データ」以下の3層で主に扱われる。

 これらの4つのアーキテクチャは密接に関連しているものの、一方で独立して検討の対象となる個別のアーキテクチャでもある。そのため、各層が他の層の単なる手段になったり、他の層の従属的な検討素材になったりすることは起こりにくい。最終的には収益アップに結びつくことが目的であったとしても、各層にはそれぞれ固有の目的や検討課題が存在している。たとえば、アプリケーションアーキテクチャの検討では、業務が変更された場合にも継続して利用できるアーキテクチャという目標を取り入れることができる。テクノロジーアーキテクチャでは、使用する技術を限ることで運用コストを下げることなどを目標にできる。それに対してBPRといった従来の手法では、そうした各層固有の目標を取り入れるのは難しいであろう。

 ただし、このEAの利点は諸刃の剣でもある。それぞれの分野(各層)に固有の事情を検討しやすいということは、EAを進めるプロジェクト自体の目標が不明確となり迷走しやすいということでもある。EAにより組織の改善を進めていく場合には、従来の手法以上にその目的を明確にしておくことが重要であろう。

(みずほ情報総研 EAソリューションセンター 近藤 佳大)

※本稿は、みずほ情報総研が2004年7月27日に発表したものです。

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