第6回 なぜアーキテクチャなのか?

近藤 佳大(みずほ情報総研) 2005年05月13日 10時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 エンタープライズアーキテクチャ(EA)により、組織の業務と情報システムの理想的な全体像を表す「設計図」が作成される。エンタープライズアーキテクチャが企業の設計図を整備する活動だとすると、なぜ設計を意味する一般的な用語である「デザイン」ではなく、「アーキテクチャ」という言葉で表現されているのであろうか?

 一つの理由は、「設計(デザイン)」という言葉を使うと、部品の設計図として着目されてしまいがちなことにあると思われる。エンタープライズアーキテクチャが目指すのは組織の「全体最適」である。そのためには、企業内セクションの役割を詳細に示す「設計図」ではなく、企業の「全体設計図」が必要がある。アーキテクチャがもともと建築様式を意味する言葉であるように、アーキテクチャという言葉を用いることで、細かく分断された詳細ではなく、全体像を把握する必要性を表現しているといえる。

 そして、アーキテクチャという言葉が使われる理由がもう一つ。それには、電気電子学会(IEEE)による定義が参考になるだろう。IEEEによると、アーキテクチャとは「システムを構成する各コンポーネント、各コンポーネント間の関係、コンポーネントと環境との関係、およびその設計と進化を支配する原理に体現された、システムの基本的な構造」のことである。この定義はわかりにくいが、注目したいポイントは「コンポーネント(構成要素)間の関係によって示された全体像」がアーキテクチャであるということである。アーキテクチャという言葉は、単に全体像を把握する必要性を表しているだけでなく、その方法も示している。すなわちEAには、「構成要素間の関係を明らかにすることによって全体像を把握する」ことが求められているからだ。

 EAには、このアーキテクチャの考え方をビジネス分野にまで拡張し、ITとビジネスを共に「構成要素間の関係」の視点から整理しようという意図がある。ビジネス分野ではアーキテクチャという言葉はEA以前にはあまり使われてこなかった。しかしながら、「要素関の関係により全体像を明らかにする」ことがアーキテクチャという視点に立てば、例えばポーター教授が1985年に提唱したバリューチェーンの考え方もアーキテクチャに他ならない。バリューチェーンに基づく戦略策定は、購買から製造、販売、サービスにいたる企業活動の全体像と、それらの間の関係に基づくものだからである。このように、アーキテクチャという言葉は使っていなくても、その「要素関の関係」という考え方自体はビジネス分野でも非常に重要なものであった。その結果、ITとビジネスの連携を目指して両者を融合したエンタープライズアーキテクチャという考えが生み出され、多くの経営者が注目するようになったのだと思われる。

(みずほ情報総研 EAソリューションセンター 近藤 佳大)

※本稿は、みずほ情報総研が2004年9月28日に発表したものです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連キーワード
経営

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
藤本恭史「もっと気楽にFinTech」
Fintechの正体
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
情報通信技術の新しい使い方
米ZDNet編集長Larryの独り言
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
田中克己「2020年のIT企業」
大木豊成「Apple法人ユースの取説」
デジタル未来からの手紙
モノのインターネットの衝撃
松岡功「一言もの申す」
三国大洋のスクラップブック
大河原克行のエンプラ徒然
今週の明言
アナリストの視点
コミュニケーション
情報系システム最適化
モバイル
通信のゆくえを追う
スマートデバイス戦略
セキュリティ
ネットワークセキュリティ
セキュリティの論点
スペシャル
de:code
Sapphire Now
VMworld
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell World
AWS re:Invent
PTC LiveWorx
デプロイ王子のテクノロジ解説!
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
さとうなおきの「週刊Azureなう」
より賢く活用するためのOSS最新動向
「Windows 10」法人導入の手引き
北川裕康「データアナリティクスの勘所」
Windows Server 2003サポート終了へ秒読み
米株式動向
Windows Server 2003サポート終了
実践ビッグデータ
中国ビジネス四方山話
日本株展望
ベトナムでビジネス
アジアのIT
10の事情
エンタープライズトレンド
クラウドと仮想化