公共の場は、もはやプライベートな空間ではないのか

Ed Gottsman

2005-04-19 22:00

 Dave Matthews Bandのツアーバスの運転手が、シカゴ川をクルーズしていた遊覧船のオープンデッキに向かって浄化槽の中の排泄物を投棄したとして、有罪判決を受けた。このとき遊覧船には100名の乗客がいたという。この運転手は何も、遊覧船を目がけて排泄物を投棄したわけではない。川に捨てようとしただけだ。最初、運転手は無罪を主張したが、周囲のビルに設置された監視カメラのテープに、この運転手の行動を撮った場面が残っていた。同バンドはFriends of the Chicago RiverとChicago Park Districtにそれぞれ5万ドルを寄付することで、事態の沈静化を図った。

 何でこのような話題に、このブログで触れる必要があるのか。

 皮肉にも、われわれのような大都市の住人は公共の場にいるとき、自分の匿名性が守られていると思い込んでいる。周囲ではたくさんの人が、行ったり来たりしているというのに(これこそ「孤独な群衆」シンドロームだ)。しかし、人々がこんなぜいたくを享受できなくなるのも、時間の問題だ(この世知辛い世の中で、これをぜいたくと言うのかどうかは分からないが)。例えば、New York Civil Liberties Union(NYCLU)は、マンハッタンの街を監視するために何千台もの監視カメラをあちらこちらに設置し、監視カメラ地図をウェブで公開している。

 米国はもはや、国家権力を発動して、Scary Surveillance Network(恐ろしい監視ネットワーク)なるものを構築する必要はない。こうしたネットワークがすでにできあがっているからだ。しかもその大部分は民間の資金でつくられたものだ。規制当局がこのネットワークを利用したいと思ったら、やるべきことはただ1つ。しかるべき時に撮られた、しかるべきテープの引き渡しを要求するだけでいい。それなりの精度の顔面認識ソフトウェアを使って、規制当局はいつの日か、あなたの情報を運転免許証データベースから見つけ出すことだろう。さらに、カメラ付き携帯電話がこれだけ普及しているのだから、近くに居合わせた人間が写真を使って、さまざまな事柄を通報するようになるだろう。そう、公共の場には、もはや以前のようなプライバシーはなくなってしまったのだ。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

自社にとって最大のセキュリティ脅威は何ですか

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]