「Jennicam」を覚えているだろうか。1996年、Jennifer Ringleyさんは、3分間に1度、自分の写真を撮影し、生活を記録することにした。Ringleyさんの生活は大変なことになった。彼女のサイトはたちまち、人気ウェブサイトのトップ10入りを果たした。米国の人気トークバラエティ番組「Late Show with David Letterman」に出演し、The Wall Street Journalの記事になり、ラジオ番組「This American Life」のインタビューを受けた。そしてRingleyさんの生活は公私ともに、手に負えない状況になっていった。Ringleyさんは2003年にインターネットの世界を離れ、今も戻ってきていない。
1996年、Jennicam騒動でインターネットが公私の境界を崩壊させ始めた。
現在、われわれはプライバシーが必要だと言いながら、Facebookでは生活を公開しすぎているし、ライブストリーミングアプリの「Periscope」や「Meerkat」では自分の生活をリアルタイムで動画配信している。そして、「Snapchat」のメッセージが表示後に必ずしも消えないことに気付いて驚いている。
われわれの多くは、Ringleyさんがしたように自分の生活を生中継したりしてはいないが、いろいろな方法でもっと多くのものを公開している。それに気付いていないだけだ。
米国家安全保障局(NSA)はいつでも好きな時にSSL通信を解読できるのかどうかといった話や、「FREAK」のようなセキュリティホール、そして政府があなたの大事な部分の写真を集めているかもしれないという話などはともかくとして、暗号化されていない情報を公共のウェブサイトに置けば必ず、それが誰かほかの人に見られることは十分あり得る。さらに、ウェブ上でのあらゆる行動は監視されている可能性がある。
FacebookやGoogleのような多くのサイトにとって、その事業計画の大部分は、ユーザーの関心を追跡することで、ユーザーへの広告をより効果的にターゲティングできるようにすることを基盤としている。考えてみてほしい。自分のページ上にある広告を見れば分かる。自分が以前検索したり、発言したり、「いいね!」を押したものを反映しているように思えないだろうか。もちろん、その通りだ。
さらに言えば、追跡されているのは、ある企業の特定のサイト上にいる時だけではない。例えばFacebookは、ユーザーがFacebookからログアウトした後には、ウェブ上でユーザーを追跡しなくなるものの、実際にFacebookをログアウトしているユーザーがどのくらいいるだろうか。誰もしていないというのが筆者の推測だ。
その上、最近Facebookは、「Facebook Login」という一種のシングルサインオン(SSO)機能を使って、Facebookのサイトから離れた時でもユーザーを追跡している。この方法では、例えばPinterestといった他のサイトへのログインにFacebookを使うといつでも、Facebookにはそのユーザーがどのサイトにいるかが分かる。
このようなことをしているのは、Facebookだけではない。Googleには、「Android」ユーザーを追跡するために「Advertising ID」があるし、Appleはユーザーの電子メールアドレスと「Identifier for Advertisers」(IDFA)を使って、ユーザーを監視している。Facebookの「Atlas」のようなビッグデータプログラムの登場によって、企業がユーザーのインターネット上でのあらゆる行動を監視することは、かつてないほど容易になっている。
われわれは、自分の個人情報と引き替えに便利さを手に入れてきたのだ。ウェブから欲しいものを素早く手に入れられる代わりに、サービスを利用した会社や、彼らの広告主に、あらゆる場面で監視されるようになった。
結論を言おう。Facebookアカウントのプライバシー設定を高くし、「iPhone」のプライバシー設定も同じようにして、SSLで保護されたウェブサイトだけを使うようにすればいい。忘れてはいけないのは、個人情報や会社の機密情報をインターネット上に掲載すれば、他人がそれを掘り出して、見られる可能性があまりにも高いということだ。そして、ウェブ上での行動については、ポリスの楽曲「見つめていたい」の歌詞を心に留めておこう。「あなたが取った行動、あなたが断ち切ったつながり、あなたの歩みのすべてを、私はずっと見張っている」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。