海外コメンタリー

新興技術を効果的に取り入れ、組織に真の価値をもたらすには--英物流大手CIOが語る

Mark Samuels (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2019-05-23 06:30

 先を見ている企業は、常に新たな技術の可能性を模索している。ただし、潜在的な可能性を持つイノベーションのすべてがすぐに成功に結びつくわけではない。

 英国の大手運送会社Wincantonの最高情報責任者(CIO)Richard Gifford氏は、「そうした新しい分野の技術を取り込む上で重要なのは、学ぶことだ。技術を知ってビジョンを持ち、どこに向かうべきかを考えることと、そのビジョンを現実的な手法に落とし込み、組織に価値をもたらす形で実現することは別のことだ」と述べている。

 Wincantonは独自のイノベーション推進プログラムを持っており、常に新しいアイデアを試している。2018年に米ZDNetが話を聞いたとき、同社はブロックチェーンなどの新しい技術の可能性を試していた。英国の港には毎日海上輸送されたコンテナが届き、Wincantonはそれらのコンテナを顧客の配送センターに運んでいる。同社は当時、顧客にコンテナの到着と積み荷の詳細を自動的に通知するために、ブロックチェーンを利用できないかどうかを検討していた。

 「概念的には良さそうに見えても、その取り組みで本当に価値を提供できるかどうかを検討していくと、その価値は消えてしまうかもしれない。これは、関係するほかの主体が同じ価値を求めていなければ意味がないからだ。われわれの場合は、配送センターを利用する顧客がそれにあたる」と同氏は言う。

 Wincantonは、大手小売店などの顧客から配送センターの運用を委託されることも多い。この場合の運用対象には、システムやスタッフ、トラックなども含まれる。同社はそれらの顧客と管理契約を結んでおり、契約の一環として業務プロセスの改善を目指している。

 ブロックチェーンなどの新技術は、そうした業務改善において重要な役割を果たす。しかし、そのために必要な投資の費用や時間について顧客に納得してもらうのは、困難な場合もある。特に、顧客が別の優先事項を持っている場合は難しい。

 「わが社が運用しているのは顧客のリソースであるため、新たなものを導入するには、それによって継続的な改善とメリットが見込めると顧客に納得してもらう必要がある。しかしこれは、コンテナ運送のような低マージン事業では非常に困難だ」とGifford氏は言う。

 「ブロックチェーンのようなものを導入しようとするときには、技術そのものよりも技術の成熟度が問題になる場合が多い。成功させるには、すべてのパートナーが取り組みに賛成し、同じレベルの理解を持っている必要がある。それなしで、この種のプロジェクトが順調にスタートすることはない」(Gifford氏)

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