中小企業の認識不足が浮き彫りになった損保協会のセキュリティ調査

松岡功

2019-04-04 07:00

 本連載では、筆者が「気になるIT(技術、製品、サービス)」を取り上げ、その概要とともに気になるポイントを挙げてみたい。今回は趣向を変えて、一般社団法人日本損害保険協会がまとめた調査レポート「サイバー保険に関する調査2018」の内容が非常に興味深いので取り上げたい。

サイバーセキュリティ対策、中小企業ほど「わからない」

 日本損害保険協会が先頃、サイバーセキュリティやサイバー保険に関するアンケート調査を実施し、国内企業1113社から回答を得てまとめた調査レポート「サイバー保険に関する調査2018」を発表した。

 「調査概要」「日本企業のサイバーリスクへの対応状況」「サイバー保険の加入状況」「サイバー保険加入促進策の検討」といった章立てで全68ページからなる調査レポートは、同協会のサイトから閲覧できる(PDF)。本稿ではその中から5つの調査結果を取り上げる。

 1つ目は、サイバーセキュリティ対応の充足度に対する認識について。結果は図1のように、企業全体では、「十分である」との回答はわずか5.2%となっている。

図1:サイバーセキュリティへの対応状況(出典:日本損害保険協会)
図1:サイバーセキュリティへの対応状況(出典:日本損害保険協会)

 傾向としては、売上規模が小さくなるにつれて、自社のサイバーセキュリティ対策について「十分である」「不十分である」ではなく、「わからない」と回答する割合が高まっており、充足度について認識していない傾向がある。

 2つ目は、自社がサイバー攻撃の対象になる可能性について。企業全体では、「可能性がある」との回答が38.9%、「可能性がない」は5.7%、「わからない」は54.9%となっており、60%以上の企業が、自社がサイバー攻撃の対象になる可能性があることを認識していない。

 従業員数別でみると、1000人以上の企業では、「可能性がある」との回答が79%に対して、50人未満の企業では25.1%にとどまり、企業規模が小さいほど、サイバー攻撃への危機意識が低い傾向がある。

 3つ目は、サイバーセキュリティの事故経験について。結果は図2のように、企業全体では、「ある」との回答が14.1%、「ない」が74.4%となっている。

図2:サイバーセキュリティの事故経験(出典:日本損害保険協会)
図2:サイバーセキュリティの事故経験(出典:日本損害保険協会)

 この結果から、売上高や従業員数、個人情報の保有数が多い企業ほど、事故経験がある割合は高くなる傾向があるが、規模が小さい企業でも事故経験があり、規模を問わずサイバー攻撃を受ける可能性はある。

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