最近、工学部電子工学科の学生と話す機会がありました。そこでびっくりしたのは、PCの知識に関しては「えっ!」と思うほど知らなかったということです。
私は銀行員時代に、教育演習として廃棄予定のデスクトップPCをシステム部に配属された新人に1台ずつ持たせ、分解させてCPUやメモリの場所を見せたり、グラフィックボードが別にあるPCにはその役割が何か、またマザーボードとチップセットの関係や、DISK、CDの物理的、論理的構造の違いなどを理解してもらったりしていました。
当時も一部の新人の中には、明らかに「こんなものを学ぶために銀行員になったんじゃない!」と、銀行にクレームを付ける輩がいました。しかし私は、「そんなに不満なら辞めればいい。でも得た知識で邪魔になることはない。必ず自分自身にプラスとなって跳ね返る時期があるから、だまされたと思って学習してほしい」と言い聞かせたものでした。
その後、フォレンジックの専門職についたある新人から、「6年前に講義で教わった内容が本当に役に立った」との話を聞いて、私は内心「やった!」と喜んだものです。
今の世の中は、PCの時代ではなくスマホですし、もう10年以上も前にセミナーやネットの記事でそういう時代が来るとお伝えしていた当時が懐かしくも思います。今の若者は物心ついた時からスマホが目の前にあり、一部の若い夫婦はおもちゃ代わりにスマホを与えている状況です。
最初は親が使わなくなったスマホを与え、そのうちに使えるスマホを買い与えている傾向にあるようです。子供にスマホを持たせるべきか否かという議論の余地は、まだあるかも知れませんが、現実にそういう傾向が出てきています。中には、小学校の入学前にスマホで算数を覚え、スマホで英語や漢字を覚えている子もいます。つまり、LINEやInstagramの使い方を親より知っている小学生が生まれているのです。ただし、そこには残念ながら人間の指導者がいません。そのうちに、そのあたりのことも人工知能(AI)が先生となって指導してくれるでしょうが、もう少し先のことでしょう。
さて、2013年に流行語大賞にノミネートされた「バカッター」は、いまでは「バイトテロ」と呼ばれています。その行為は、コンビニのアイスクリームケースの中や冷蔵庫の中に体を入れたり、お店のお椀をブラカップに見立ててネットにアップしたりと、本当に酷いものばかり。常識で考えると、「それはまずいでしょ」と思われる行為をわざわざネットにアップしています。「バカッター」として騒がれ下火になったかと思いましたが、最近ではまた「バイトテロ」という別の呼び名で再び世間を騒がしています。
今回は、こうした行為を働く場で抑止させるヒント、そして、さらにはこうした中でうまく活用させる「術」についてご紹介します。
バイトテロを抑止するために
「バイトテロ」に関しては、ネット上にさまざまな記事があります。見当違いの意見や結構参考になる意見など実に千差万別ですが、ここでは私の実体験をもとに注意点をお伝えしたいと思います。例えば、「そば屋」の経営者が3人のアルバイトを指導する、ということで考えてみましょう。
まず経営者は、アルバイトの方々に「経営者の考え」や「人生の教訓」を個別に教えるべきではありません。その理由は、彼らの目線が“経営者視点”ではないからです。無理やり「人生とは」「物を大切にする」という方向に行かせようとすれば、その反動も大きくなる可能性があります。
そして基本は、「教育」であり、しかも「反復」であるべきです。アルバイトの時間内とは「学習=勤労の一部」であることをきちんと伝え、話を聞いてもらいます。
経営者が話す内容は、得てして「道徳」の方に向かいがちですが、そうしてはいけません。若い人(学生など)がその内容を心から受け入れてくることは少ないでしょう。
そこで、彼ら自身が大事にしているもの(アニメのグッズやアイドルのサインでも良いでしょう)を思い浮かばせるようにして、「それが心ない他人によって壊されたり、破られたりしたらどう思う?」と考えてもらうようにします。その延長線の中で、経営者として大事にしているのは「そば屋」のお店そのもの(ドアもイスもメニューも全て)であり、おそばに代表されるお客さまに提供する心を込めて作った食べものであることを理解してもらいます。
その上で、「悪ふざけ」は許されない行為であり、経営者としては「全力で阻止すべき行為」であることを認識させます。「皆さんがお金を払って食べるそばがアルバイトによって調理場の床に落されたり、汚い手でわしづかみにされたりしたことが発覚すれば、二度と来るはずがないでしょう」――こう指導します。
最も重要なことは、お客さまがいる職場とは「聖域」に近く、普段から厳しい仕事であるという意識を持ってもらう点です。お金をいただく以上、彼らにとってこの職場での経験がいかに大事なものであるかを知ってほしいもの。ですから、経営者自身も溺れることなく、経営者として常日頃から厳しい面と優しい面を持ち、仕事にプライドを持って臨んでいる姿を彼らに見せることが大切です。