米企業のクラウドに背を向け欧州のプライベートクラウドに--一部の欧州政府機関で

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2019-09-04 12:42

 1000人を超える従業員を抱える欧州企業の多くは、同規模の米国企業と同様、パブリッククラウドプラットフォームを利用するようになっている。しかし欧州各国の政府は、「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」「Google Cloud」「IBM Cloud」を信頼してデータを預けても良いかどうか、確信を持てないでいるようだ。これら政府が懸念しているのは、米国のCLOUD(Clarifying Lawful Overseas Use of Data)Act(データの海外における合法的使用の明確化法)によって、米国外に保存されている欧州連合(EU)市民のクラウドデータについても、米司法当局が一方的にアクセスを要求という点だ。このため、オープンソースのIaaSクラウドとして人気を博している「Nextcloud」などを利用している、欧州に拠点を置くプライベートクラウドに目が向けられるようになっている。

 Nextcloudのマーケティング責任者であるJos Poortvliet氏は「欧州各国の政府はますます、デジタル主権を重視するようになっており、外国企業によって一元管理された大規模クラウドソリューションに背を向けるようになっている」と述べている。特に、フランスのデジタルサービス税に対するDonald Trump米大統領の報復警告や、EUの一般データ保護規則(GDPR)と米国のCLOUD Actとの間で続く、プライバシーをめぐる法的な論争が影響していると考えられる。

 フランス内務省や、オランダ教育省、ドイツ連邦政府、スウェーデンの連邦政府機関は米企業が提供するパブリッククラウドに対する依存を減らすために、Nextcloudベースのプライベートクラウドへの導入を進めている。

 フランス内務省は、Nextcloudの文書共同編集機能を搭載したプライベートIaaSクラウドを30万人の職員に展開しつつある。同省のITインフラ担当責任者であるThierry Markwitz氏は声明に、「フランス政府は自国の市民と職員が有しているデータの安全について大いに気に掛けている。われわれは欧州の先進的ベンダーであるNextcloudの提供する、セキュアで使いやすいオンプレミス型のコンテンツコラボレーションプラットフォームNextcloudをソリューションとして採用した」と記している。

 スウェーデンでは、スウェーデン社会保険庁がNextcloudを導入し、ファイルストレージやインスタントメッセージングの機能を利用している。パブリッククラウドに背を向けようとしているわけではないという。スウェーデン社会保険庁の最高技術責任者(CTO)Mikael Norberg氏はComputerSwedenに対し、「GoogleやMicrosoftのようなものにしようとしているのではない。われわれはそのようなことを強く志向しているのではない。完全な暗号化に対応するとともに、プライベートクラウドにあるということで、各機関がデータを他機関と共有する際にこれを利用するかどうかを判断できる」と話した。

 ドイツ経済エネルギー省のPeter Altmaier氏(ドイツキリスト教民主同盟所属)は、欧州のクラウドが、競合する米国企業の代替になってほしいと考えている。また、Deutsche Telekom1&1 IONOSもそれぞれ、EUにおけるクラウドのシェアを拡大したいと考えている。

 1&1 IONOSの最高経営責任者(CEO)Achim Weiss氏は、ドイツの商業経済紙Handelsblattとのインタビューで「われわれはドイツ(の市場)を大企業の手に握らせておくつもりはない。政府が関与し、大衆の意識が拡大していけば、ハイパースケール企業による市場の寡占に対抗していける。ドイツと欧州はこういったサービスを構築できるだけの十分な専門性を有している」と語っている。

 パブリッククラウドは欧州で急速に成長を続けているが、クラウドリソースのプライバシーと地元での統制に向けた要望によって、クラウド市場での競争が生み出されようとしている。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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