Gartner Symposium

「アイデアの創造を促す環境を用意し顧客の潜在的課題を解決せよ」--SMBCグループCDIOの谷崎氏

日川佳三

2019-12-05 06:00

 ガートナー ジャパンは2019年11月、年次カンファレンス「Gartner IT Symposium/Xpo 2019」を開催した。ゲスト基調講演には、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の谷崎勝教氏が登壇。「進化し続けるSMBCグループのデジタライゼーション戦略」と題し、SMBCグループが取り組むデジタル化の実例を紹介した。

 SMBCグループでは、自社を起点とした守りのデジタル戦略と、顧客を起点とした攻めのデジタル戦略に取り組んでいる。守りのデジタル戦略では、ITインフラのデジタル化や業務プロセスのIT化を進める。一方、攻めのデジタル戦略は、DI(デジタルイノベーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)の両輪で推進する。DIにおいては、変化をチャンスと捉え、これまでにないサービスを創出する。DXにおいては、ビジネスモデルの変革を図る。

三井住友フィナンシャルグループで執行役専務グループCDIOを務める谷崎勝教氏
三井住友フィナンシャルグループで執行役専務グループCDIOを務める谷崎勝教氏

 攻めのデジタル戦略は、2つの手段で推進する。1つはデータの活用だ。マーケティングや製品化にデータを活用する。実例の1つとして、ヤフーと合弁でデータ活用の会社を設立した。もう1つの手段は異業種とのコラボレーションであり。競争力のある外部企業を活用する。

 デジタル化のアプローチで大切なことは、顧客を中心に据えること。谷崎氏は、「顕在化している課題にとどまらず、潜在的な課題も解決しなければ、大きな価値を提供できない。大きな価値を提供するためには、どのようなテクノロジーが必要なのかというアプローチが大切だ」と指摘する。

 「前例を踏襲するだけでは現状の延長線上にあるゴールにしか到達できない」と谷崎氏は指摘する。より良いサービスを生み出すため、SMBCグループではデザインプロセスを重視している。現状の本質的な課題を創造的に解決することで、望ましい将来を得られる。

 谷崎氏は、「経営者はマインドの在り方を考えなければならない」と指摘する。「5000万ユーザーを獲得するために要した時間は、飛行機が68年、Facebookが3年、Pokemon GOは19日。スピードが変わってきている」(谷崎氏)

社内イベントや異業種交流でアイデアの創造を促す

 SMBCグループでは、役職員のマインドセットを変えるための施策の1つとして、日曜日の午後に、500人の役職員と家族を呼ぶ社内向けのイベントを開催した。当日参加できない人向けには、後から追体験できるように冊子を作って配布した。2019年に第1回イベントを開催したが、内部向けイベントは継続性が重要なので、2020年以降も開催する。

 アイデアの創造を促す環境にも注力している。「1000個のアイデアの3つが成功する世界なので、アイデアを量産することが大事だ」(谷崎氏)。SMBCグループでは2019年9月、東京・渋谷にコラボレーションスペース「hoops link tokyo」をオープンし、既に3万人が来場した。同年10月には、hoops link tokyoを介して弁護士ドットコムとの合弁会社「SMBCクラウドサイン」も設立した。

 「SMBC Brewery」と呼ぶ取り組みにも力を入れている。異業種とSMBCグループが協力して新しい事業を共創しようという試みだ。これまでにSMBC Breweryのプログラムを通じて約420~430個のアイデアが生まれた。1つの例として、将棋AIで有名なHEROZとSMBC日興証券が協力し、2019年3月に「AI株式ポートフォリオ診断」と呼ぶサービスをリリースした。

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