エッジAIコンピューター「Infini-Brain」などを実証実験--FCCLが取り組み披露

大河原克行

2019-11-22 07:00

 富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は、新コンセプト「Inter-Connected Computing Platform(ICCP)」を発表。それに基づいた製品として「MIB(Men in Box)」と「Infini-Brain」の2つの製品を開発し、教育分野や小売店などで実証実験を開始した。11月20日に島根県出雲市の島根富士通において開催した会見で明らかにした。

 MIBは、同社が取り組む新規事業創出プロジェクト「Computing for Tomorrow」から生まれた教育分野向けエッジコンピューター。また、Infini-BrainはLenovo傘下で事業を開始した2018年5月に、開発表明していた汎用型エッジコンピューターだ。両製品ともに実証実験の段階に入ってきたことを示し、具体的な活用例を紹介した。

 富士通クライアントコンピューティング 執行役員常務の仁川進氏は、「ICCPは、まとまった台数のデバイスと、これと接続されるコンピューティングデバイスが対話することで、サーバーやクラウドに代わって、コンピューティングを提供。その中で、完結したサービスが提供できるものになる。例えば、教室では30~40台のタブレットが利用されているが、学校の基幹ネットワークが細いと、コンテンツのダウンロードもできない状況になる。ICCPでは、基幹ネットワークを利用せず、教室内のネットワーク環境でダウンロードできるため、外部環境の影響を受けることがなく、授業を止めずに利用することが可能だ。また、工場や家庭内から吸い上げたデータを、AI(人工知能)などの活用によってクレンジングしたり、必要なデータに作り替えたりして、クラウドに上げることができる。この結果、クラウドのコンピューティング能力やネットワーク帯域に余裕ができ、よりよいサービスが提供できるようになる」とした。

 一般的にはエッジコンピューターと位置付けられる仕組みだが、「基幹ネットワークとデバイスの間に提供するコンピューティングにより、ネットワークを分離。そこにFCCLが得意とする機能を提供するものになる。あえてエッジコンピューターとは呼ばない」とした。

 また、「AI市場は、2030年には2兆円を超える市場規模が想定され、さらにネットワークトラフィックも年々増大している。テクノロジーは豊かな世界を実現するが、課題はネットワークパワーやコンピューティングパワーが確保できるのかという点。データが重い、ネットワークが細いといった障害によって、本来便利になるはずのものが、逆にユーザーの利便性の低下を招く可能性もある。FCCLは、お客さまに寄り添った製品を開発する力と、WindowsとIntelアーキテクチャーに対する深い理解、そしてニーズに合わせた要素技術を製品化する力がある。これらを生かしてお客さまの近くで必要となる新たなコンピューティングを考えることが、これからの役割になる」などとした。

 MIBは、教育分野での用途を想定したエッジコンピューターで、教室内にMIBを設置し、その中に格納された教育コンテンツを、Wi-Fiを使って生徒のタブレットに配信することができる。「単なるWi-Fiルーターやコンピューティング、ストレージの技術を提供するだけでなく、40台に対して均一にデータを配信したり、教員が使用する場合には、教員用のタブレットやPCにネットワークリソースを割り当てるといった特別な制御を行えるようにしている。教育現場の声を反映した機能を搭載しているのが特徴である」とした。現在、出雲市教育委員会と実証実験を開始しているという。

 富士通クライアントコンピューティングでは、教育現場向けには専用タブレットを開発しており、これとの組み合わせ提案も加速する考えだ。

 富士通クライアントコンピューティング 社長の齋藤邦彰氏は、「富士通は教育向けタブレットで66%のシェアを持つ。先生や生徒などの教育現場からの要望をもとに改良を加えたもので、生徒の机から落ちにくいように、手前に重心をおいた設計としたのも、現場で感じたことや意見を製品に反映した結果である」などとし、「まだ教育現場には全体の39.3%しかデバイスが導入されておらず、安倍晋三首相も1人1台の環境が必要であると明言している。今後、教育現場への導入が促進する中で、FCCLの強みを発揮したい」と述べた。

 Infini-Brainは、AI活用に最適化し、分散処理が可能な汎用性を持ったエッジAIコンピューターとなる。WindowsとIntel製CPUによるプラットフォームを採用するとともに、6枚のGPUを搭載。その間にFCCLの独自アーキテクチャーであるブリッジコントローラーを置き、CPUとGPUの双方向通信や、GPU間の双方向通信をシームレスに行えるようになる。

 「Infini-Brainは、お客さまの近くで実用的なAIを実行するためのものになる。PCと同じプラットフォームを採用しているため、PCを1台追加で導入するような形で設置でき、導入スピードを高めることができる。工場やオフィスではWindowsプラットフォームが数多く採用されており、カメラやセンサーなどもWindowsプラットフォームに対応したものであれば、すぐに接続できる。また、外部要因から切り離すことで、安定した推論処理を迅速に行える環境も実現できる。ここでは、Wi-Fiやローカル5Gを活用することも可能であり、特にローカル5Gとの組み合わせで、Infini-Brainの可能性は大きく広がることになる」とした。

 さらに、「6枚のGPUを使って、負荷分散させたり、並列処理させたり、シーケンシャルに利用したりできるため、AI側の処理に合わせてGPUをフレキシブルに利用することが可能になる。性能と機能のスケーラビリティーを実現している。また、GPUをはじめ、CPUやFPGA、専用チップなど、さまざまなアクセラレーターの組み合わせに対応する」と述べた。

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