本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本ユニシスの平岡昭良 代表取締役社長と、dotDataの藤巻遼平 CEO(最高経営責任者)の発言を紹介する。
「DXはあくまでもツール、肝心なのはそれをどう生かすかだ」
(日本ユニシス 平岡昭良 代表取締役社長)
日本ユニシスの平岡昭良 代表取締役社長
日本ユニシスが先頃、2019年度上期(2019年4〜9月)連結決算と、2018年度(2019年3月期)から2020年度(2021年3月期)までの中期経営計画の取り組み状況について記者説明会を開いた。平岡氏の冒頭の発言はその会見で、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組み姿勢について語ったものである。
2018年度にスタートした中期経営計画では、「顧客・パートナーと共に社会を豊かにする価値を提供し、社会課題を解決する企業」として、業種・業態の垣根を越え、さまざまな企業をつなぐビジネスエコシステムを創る中核となり、ビジネスと社会のDXを実現するプラットフォームを提供していく方針を掲げている(図参照)。
中期経営計画の最終年度である2020年度の数値目標は、売上高3200億円、売上高営業利益率8%以上。計画前の2017年度実績は、それぞれ2870億円および5.7%だった。平岡氏は現状について、「今回の2019年度上期決算は中期経営計画の半分を過ぎたところだが、現状としてはデジタル化に向けた社会の意識の高まりや、お客さまのDXへの取り組みが進んでおり、順調に推移している」と語った。
ちなみに、2019年度(2020年3月期)の業績予想は、売上高が3070億円、営業利益率が7.5%。売上高を3000億円台に乗せ、2020年度の数値目標に向けて着実にまい進している。
そこで筆者は、同社のDX事業への取り組み姿勢について聞いてみた。それに対し、平岡氏は次のように答えた。
「DXは今やすっかり流行り言葉になっているが、当社ではこれはあくまでもツールであり、肝心なのはDXをどう生かしていくかだ。私たちとしてはDXによってお客さまに提供するサービスを変革し、お客さまの企業文化まで変革する。さらに社会のありようそのものを変革していく。さまざまな社会課題を解決して、よりよい社会を創ることにぜひ貢献したいという思いでDX事業に取り組んでいる」
同社はDXについて、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と説明する。
ただ、平岡氏の冒頭の発言によると、DXはそれを実践する道具立てであって、DXを本当に生かせるかどうかは、道具を使う側の私たちの取り組み次第ということだろう。「DXはあくまでもツール」、印象に強く残った言葉である。