インテル、量子コンピューティングの商用化に向け「Horse Ridge」チップを発表

Larry Dignan (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2019-12-10 12:56

 Intelは米国時間12月9日、極低温域で動作する量子制御チップ(開発コード名:「Horse Ridge」)を発表した。このチップにより、量子コンピューティングの商用化に向けた動きが前進するという。

Horse Ridge
Horse Ridge
提供:Intel

 Horse Ridgeの使用により、Intel Labsとその研究パートナーであるデルフト工科大学の研究機関QuTechは、複数の量子ビット(キュービット)を制御し、システム規模をさらに拡大していくことが可能になった。なお、今回の発表の数日前までのおよそ1週間にわたって、QualcommやArmとそのパートナーといった旧来の競合企業から、Intelにとって脅威となり得るニュースが立て続けに発表されていた。

 量子コンピューティングは注目を集めている研究分野だ。IBMは約1年前のCESで商用システムを披露している。そしてGoogleは量子超越性を実証したと発表し、黎明期にある業界やIBMとの論争に発展している。また、Amazon Web Services(AWS)も量子コンピューティング向けマーケットプレイスの概要を発表している。ただ、量子コンピューティングに必要となる要件を考えた場合、その利用のほとんどはクラウド経由になるはずだ。

 Horse Ridgeは、Intelの22ナノメートルFinFETテクノロジーに基づいてチップ上に構築された統合システムであり、これによって量子システムを操作するための制御用電子回路を簡素化し、現在の無骨な装置を置き換えられるようになる。

 Intelで量子ハードウェアの責任者を務めるJim Clarke氏によると、同社が量子制御に注力するのは、それによって限界を押し上げられるためだという。同氏は発表の中で「キュービット自体が何度も強調されているものの、多くのキュービットを同時に制御する能力が業界の直面している難関だった」と記している。

 つまり、キュービットをいくら増やしたとしても、各回路を集積、相互接続したうえで制御できなければ、その潜在能力や実力を十分に発揮できないというわけだ。こういった量子システムを統合できれば、Intelが「量子実用性」と呼ぶものに向けた追求へのより優れた道が開かれる。

 量子実用性とは、量子コンピューティングが従来型のコンピューターでは十分高速に処理できないような問題を扱えるようになる状態を指している。IBMは、量子実用性と同一線上にある「量子優位性」と呼ばれるものを追い求めている。

 Horse Ridgeは以下のような特長を有している。

  • これはチップ上に高密度で集積された混合信号回路であり、これによって量子冷却装置内でのキュービットの制御が可能になる。
  • Horse Ridgeは、冷却装置内のキュービットを制御するための高周波発振プロセッサーとして機能することで、距離と配線の最短化を実現する。
  • Horse Ridge制御チップは、絶対温度でおよそ4K(ケルビン)という極低温で動作するよう設計されている。これは絶対零度よりも華氏にして7度(摂氏にして4度)高い温度となっている。なお、古典力学において、原子は絶対零度で振動を停止するとされている。
  • 現在の量子コンピューターは、数十ミリK以下で動作するようになっている。それよりも高い温度で動作するHorse Ridgeによって、冷却に関する難問を解決できる。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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