多くの業界では、従業員にリモートワークを許可することが増えている。積極的に奨励している場合さえあるが、それにはそれなりの理由がある。非常に多くの労働者が、リモートワークができることを優先事項リストのトップに位置づけていることが分かってきたのだ。
それもある意味では当然のことだろう。自宅で勤務できれば、オフィスの空調に凍えることもないし、難しい人間関係にも煩わされずに済む。
リモートワークを全面的に禁止している企業は、この問題に対する従業員の感じ方が劇的に変化していることに注意を払うべきだろう。実は、米国のナレッジワーカー(知識労働者)の4分の1以上に、柔軟な働き方やリモートワークが許されていないことが理由で仕事を辞めた経験があるという。
これは、Zapierが最近公表した調査レポート「The Remote Work Report」で明らかになった調査結果の1つだ。タスク自動化ツールを提供する企業であるZapierは、仕事を全面的にリモートワークで行っている最初の、そして最大の企業の1つだ。同社は、「The Harris Poll」で米国のナレッジワーカー(コンピューターの前に座って働いている雇用されている成人)を対象とした調査を実施し、労働者のリモートワークに対する考えを詳しく調べた。
その結果、ほぼ全員が、少なくとも業務時間の一部はリモートで働きたいと考えていることが分かった。また、回答者の約74%は、自宅で仕事ができるなら転職しても構わないと考えており、4人に1人以上は、柔軟な働き方やリモートワークが許されていなかったことが理由で、すでに転職した経験があった。
人々がリモートで働きたいと考える理由の上位には、ワークライフバランスに関連するものも入っていたが、ほかにもさまざまな要因が作用している。例えば回答者の4人に1人弱が「環境の持続可能性のためによいから」だと述べており、5人に1人は「ペットと過ごす時間を増やしたいから」だと回答していた。
また、少なくともこの調査では、女性は男性よりもリモートワークを重視している一方で、その機会が少ない傾向にあることが分かった。さらに女性は、雇用者から提供される福利厚生制度の中で、リモートワークをもっとも重視する人の割合が男性よりも高い(62%と53%)にもかかわらず、リモートワークが許可されているかどうかには男女差があった。会社が許可していないためリモートワークをしていないと答えた女性従業員は40%に上ったが、男性の場合は25%しかいなかった。
リモートワークに関して厳しい方針を取っている企業は、その姿勢を再考すべきかもしれない。多くの従業員(42%)は、在宅勤務の方が生産性が高いと考えており、オフィスの方が多くの仕事ができると感じているのは、3分の1弱(32%)にすぎない。
人材獲得競争におけるアドバンテージの問題もある。競争が激しくなっている求人市場では、在宅勤務が選べる企業には大きなアドバンテージがあり、給与待遇がよい企業よりも有利になる場合があるかもしれない。
事実、労働者の大半は、従来型の職場は今後10年以内になくなり、ほとんどの仕事はリモートで行われるようになると考えているという。調査によれば、ナレッジワーカーの約3人に2人(66%)は、2030年までにほとんどの仕事で従来型のオフィスはなくなると考えていた。
雇用者側も無視するわけにはいかなくなるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。