Forrester Researchはもう、「モバイル」分野だけを扱った予想レポートを公表していない。これは、モバイルがビジネス変革を支え、実現する重要な要素の1つになったからだ。今やモバイルは、あらゆるところに組み込まれている。ただし多くの企業は、自分たちのモバイルに対する取り組みはすでに十分だと(誤って)思い込み、次の新しく革新的な技術に取り組もうとしている。一言で言えば、モバイルファーストから人工知能(AI)ファーストに移行したいと考えているのだ。筆者は数カ月前、「モバイルファースト」のコンセプトは最高マーケティング責任者(CMO)を失望させていると指摘するレポートを発表した。多くの企業のモバイルに関する取り組みはまだ未熟で、取り組みを再検討してトータルなブランド体験を実現する必要がある。
以下では、Forrester Researchが今後起こると予想している15のトレンドをまとめる。
- モバイルがビジネス変革の触媒になる。モバイル革命の核は、顧客の期待を変え、顧客が必要としている瞬間に、コンテキストに合ったサービスを提供することだ。顧客の時代(企業から顧客へのパワーシフト)は、モバイルによって加速した。企業には、そうした期待の高まりに応え、顧客にモバイル思考になってもらうために、組織の文化や体制、業務プロセスを進化させていく(例えばアジャイル、DevOps、機能横断的な小規模チームなど)必要があったし、それは今も変わらない。この、より適応力の高い企業への進化は、今も進行中だ。これは新しい話ではないが、2020年にはさらに加速する。
- モバイルが、さまざまな新技術を大規模に結びつける接着剤のような役割を果たすようになる。例えば音声アシスタント(「Amazon Alexa」や「Googleアシスタント」など)は、実際にはスマートスピーカーよりもスマートフォンで使われることが多い。また拡張現実(AR)市場では、大規模なプラットフォーム間競争が起こりつつあり、2020年には本格的にARが発展し始めるだろう(「Googleマップ」のAR機能や、「Snapchat」のAR体験を考えてみてほしい)。開発者は、10億台以上の互換性のあるスマートフォンを利用して、新しい総合的な体験を実現できるようになる。
- モバイルがパーソナライズされた体験のハブになる。これはチャネルではなく、オフラインとオンラインが融合した体験をリアルタイムで提供するための手段だ。一部の企業(Starbucks、McDonald's、Nike、Argos、John Lewis、Schibstedなど)はこれを理解しており、モバイルをうまくマーケティング戦略に組み込んでいる。しかし、ほとんどの企業は苦戦しており、モバイルに関する取り組みの基礎を修正しなくてはならないのが実情だ。