人工知能(AI)と機械学習(ML)の導入がゆっくりと、しかし着実に進んでいることから、モデルやベースとなるシステムの設計や構築に関する業務が増えている。Algorithmiaが、750人の技術マネージャーと技術プロフェッショナルなどの意思決定者を対象に実施した調査によると、データ科学者の増加が頭打ちになっているため、こうしたプロジェクトは今後、IT部門が手がけることになりそうだ。
同社は、ML関連の取り組みの成長や要員配置について調査した。報告書の執筆者らによれば、企業は必ずしもデータ科学者を増員しておらず、すでに社内にいるスタッフがその分、忙しさを増している。
このため、関連スキルを持つスタッフに新たな機会が生まれている。社内にデータ科学者を50人以上抱えている企業は少なくとも19%にのぼり、前回調査時の9%より増加した。報告書によると、データ科学者の職務はあらゆる業界で急増している。しかし、大幅な人材不足により、既存のスタッフが肩代わりをすることになる。「データサイエンスに関するリソースが全体的に不足していることから、機械学習モデルの作成と管理に従事する開発者が、ますます増える見通しだ。こうした職務の兼任によって、この調査結果に関連して新たな現象が生じることになりそうだ。似たような業務にさまざまな職名や肩書きが使われるようになるだろう」(報告書)
新たに登場しているAIおよびML関連の職務として、次のようなものがある。
- MLエンジニア
- ML開発者
- MLアーキテクト
- データエンジニア、ML運用(ML Ops)
- AI Ops
また調査から、MLの取り組みが成功したかどうかの判断は、人によってその基準が異なることが明らかになった。過半数の58%は、ROIの創出、顧客離れの低減、製品採用への貢献、ブランド忠誠心の促進を達成できれば、取り組みが成功だと考える。また別の58%は、モデルの正確さと精度、速度、ドリフトがしきい値を満たせば成功だと判断することが分かった。
報告書の執筆者らによると、こうした相対的な成功の測定基準は、社内の職務によって変わってくる。「MLの成功について考えるとき、データサイエンティストやソフトウェア開発者などの一般社員レベルは、ビジネスの指標よりも、技術面の測定値に価値を置く」。一方、最高責任者クラスやバイスプレジデントなどは、「概してその逆の傾向があり、企業の戦略レベルで最終的にどのようなメリットがあるかによって、MLの成功を判断する」。
一方、中間レベルの管理職やディレクターは、ビジネスと技術の両方、すなわちROI、予算、戦略的プランの指標に加え、モデルの性能に関連した技術的指標を考慮する。Algorithmiaの報告書の執筆者らは、マネージャーやディレクターなどの層が、「今後数年間、組織のMLに関する意思決定で、中核的な役割を果たすだろう」と予測する。「チームの能力を実証しようと取り組むほか、MLは投資する価値があると、上級管理職に証明できる立場にあるからだ」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。