情報処理推進機構(IPA)は3月31日、「アジャイル開発版 情報システム・モデル取引・契約書」を公開した。デジタルトランスフォーメーション(DX)でのアジャイル開発におけるシステム開発時の取引や契約を取りまとめている。
このモデルは、経済産業省が公開した「DXレポート」での指摘に基づき、IPAが2019年5月に設置した「モデル取引・契約書見直し検討部会」および「DX対応モデル契約見直し検討ワーキンググループ」で作成された。DXレポートでは、DXにおける情報システム開発では、不確実性を前提に仮説検証を繰り返していくアジャイル開発が有効とする一方、ユーザー(発注側)とベンダー(受託側)の役割の変化などを踏まえたモデル契約見直しの必要性が指摘されていた。
IPAは、作成に当たってユーザーとベンダーがアジャイル開発の特徴を理解した上で、価値の高いプロダクト開発を目指して両者が緊密に協働しながら適切に開発を進めることができるモデル契約にすべく、業界団体や法律の専門家の参画も得て検討を重ねてきたとする。
例えば、アジャイル開発はプロセスの中で機能の追加や変更、優先順位の変更、先行リリース部分の改善などに柔軟に対応することができるため、開発対象全体の要件や仕様を確定してから開発するウォーターフォール開発とは異なる。このためアジャイル開発の契約は、ウォーターフォール開発における請負契約ではなく、ベンダーが専門家として業務を遂行すること自体にユーザーが対価を支払う準委任契約が前提になる。
アジャイル開発の流れや体制とIPA資料の対象範囲
アジャイル開発版 情報システム・モデル取引・契約書では、ドキュメントとしてひな形や解説に加え、こうしたアジャイル開発の性質をユーザーとベンダーがともに理解した上で契約を行っていくための「契約前チェックリスト」や「アジャイル開発進め方の指針」などの補足資料も提供している。
作成に当たったDX対応モデル契約見直し検討ワーキンググループでは、「当事者がアジャイル開発の適する条件やその適切な進め方を正しく認識することで、開発対象のシステムがアジャイル開発で進めることが真に適切なのかどうかを事前に確認できる。また、開発において当事者に求められる役割や負担をあらかじめ明確に認識しておくことで、開発開始後に役割が十分に果たされないという事態を予防する」といったメッセージを発表した。