Brian Solis氏は、破壊的なテクノロジートレンドに人間味を持たせられるという点で、業界で一二を争うインフルエンサーだ。同氏はこれまで20年以上にわたり、アナリストや講演者、作家として、企業のリーダーらに対してディスラプションの意味するところを把握する上で支援するとともに、彼らをイノベーションや変革の戦略で導く役割を果たしてきている。
Solis氏と筆者が出会ったのは10年以上も前のことだ。当時、ソーシャルメディアはまだ黎明期にあり、Web 2.0は台頭し始めたところだった。Solis氏は最近、グローバルイノベーションエバンジェリストとしてSalesforceに加わったため、筆者は同氏とともに働けるのをとてもうれしく感じている。筆者は同氏に連絡を取り、同氏の仕事や、今後の目標について話を聞くことにした。また、さらに重要なこととして、昨今のような前例のない状況に対する同氏の意見を聞き、現状を切り抜けて未来へと進んでいくための同氏のビジョンを読者に紹介したいと考えたのだった。
SalesforceのグローバルイノベーションエバンジェリストであるBrian Solis氏
——人間の行動力学とイノベーションの重要性はどこにあるのでしょうか?
Solis氏 イノベーションはテクノロジーだけの話にとどまりません。新たな価値を創出する、あるいは築き上げることでもあります。旧態依然とした企業の多くは、既存のプロセスやシステムを向上させるためだけに新たなテクノロジーを使用するという繰り返しから抜け出せないでいます。プロセスやシステムは重要ですが、先の見えない現在にあって、繰り返しは事業継続性の保証や向上のためのものです。その一方、さまざまな面でのイノベーションは、競争上の優位性をもたらします。私はデジタル分野の人類学者として、イノベーションや変革における人間の行動力学を理解しようとしています。例を挙げると、私の最近の研究では、デジタルなライフスタイルが創造性や生産性、われわれの全体的な幸福というものに対して与える影響を考察しています。これらをまとめて考えることで、あらゆるものごとがはっきりと見えてくるのです。研究の成果は私の近著「Lifescale: How to Live a More Creative, Productive and Happy Life」(ライフスケール:より創造的で生産的なハッピーライフを送るには)に著しています。
Salesforceのグローバルイノベーションエバンジェリストであり、「Lifescale: How to Live a More Creative, Productive and Happy Life」の著者であるBrian Solis氏
——「Novel Economy(新たなエコノミー)」と表現しておられるものにどうかかわっていけばよいのでしょうか?
Solis氏 ここでは慎重な姿勢を取りたいと考えています。私も分からないことが明確になっていないのです。パンデミック後の戦略については、われわれの友人であるRay Wang氏とConstellation Researchのチームが最近、レポートを公開しましたが、私はまだ何も書けていない状態です。ただ、われわれは近代の歴史で最も大きな混乱のまっただ中にいるとはいえ、将来の混乱に備えて包括的な危機管理計画を練り上げておく必要があると指摘しておくのは重要だと考えています。
そうした計画の策定を支援するために、私は利害関係者や専門家と行動をともにしながら、(リーダー陣や顧客、従業員の)行動を観察しています。彼らが共通して抱いているのは、従来の事業形態からニューノーマル(新たな日常)に移行しつつあるという考えです。