ServiceNow Knowledge

ニューノーマルにおけるデジタルでの働き方を示すサービスナウ

國谷武史 (編集部)

2020-05-07 06:00

 米ServiceNowは5月5日、年次カンファレンス「Knowledge 2020 Digital」をオンラインで開催した。基調講演では、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症によってもたらされるニューノーマルでの新しい働き方についてIT、従業員、顧客の3つの軸でそのあり方を示した。6月中旬まで実施している。

 2019年に約2万人の参加者を集めた同社のカンファレンスは、2020年については米国フロリダ州マイアミでの開催が予定されていた。COVID-19の感染が続く中、実際に人が集まるイベントは規模を問わず集団感染の発生リスクが高いとして世界中で禁止・自粛され、わずか2~3カ月で一気にオンラインへシフトした。ウイルスパンデミックがもたらした行動変容の1つであり、感染の流行もすぐに収束せず今後数年間に及ぶと予想される。

 もはやCOVID-19以前の日常生活や社会に戻ることは不可能との見方も広がる。これから長く続くウイルス感染症との戦いでは、生命と経済を守るためにソーシャルディスタンス(社会的距離)やテレワークなどの新しい行動様式へ早急な移行が世界中で求められ、日本でも「新しい生活様式」の実践が提唱されたばかり。人間同士の物理的な接触が減少する今後は、デジタルの“つながり”がベースとなり、働き方もそれが前提になっていくのかもしれない。

ServiceNow CEOのBill McDermott氏
ServiceNow CEOのBill McDermott氏

 基調講演の冒頭では、2019年11月に新CEO(最高経営責任者)に就任したBill McDermott氏が登場。「企業に必要なことはコンシューマーの体験を持ち込み、モバイルやチャットボットなどの新しいテクノロジーと、数十年にわたってERP(統合基幹業務システム)などに蓄積されたSoR(System of Rerecord)のデータをつなぎ、可視化し、効率的で生産的な働き方を実現することだ。ServiceNowはそのためのプラットフォームを提供している」と短めにあいさつした。

 SAPの前CEOでありエンタープライズITの世界では著名なMcDermott氏だが、同氏が言及した“コンシューマーの体験”という思想は、前任者でNikeの現CEOを務めるJohn Donahoe氏に由来する。McDermott氏の経営方針は、同社の従来路線を踏襲してエンタープライズ市場での立場をより強固にするものであるようだ。同社が4月29日に発表した2020年第1四半期の業績は、サブスクリプション収入が前年比34%増の9億9500万ドルで、通期では27%増の41億2500万~41億4500万ドルを予想する。

 McDermott氏は、決算発表で同社のプラットフォーム「Now Platform」がユニークであり、売上高100億ドル超の達成に向けた自信は今も揺るがないとコメント。カンファレンスでは多くを語っていないが、同社のプラットフォームがCOVID-19以降における働き方のニューノーマルを築いていくとのメッセージを発信した。

 COVID-19への対応として同社では、危機管理支援アプリケーション群を3月から提供(日本では4月から)している。またパートナー企業のCaskは、米国ロサンゼルス市が導入しているドライブスルー方式のPCR検査の予約や情報共有などを行うシステムを、Now Platformやアプリケーション開発環境の「App Engine」などを使って約2日で構築した。Cask バイスプレジデントのJason Rosenfeld氏は、「まず48時間でシステムを構築し、約2週間でロサンゼルス市からロサンゼルス群内の多数の街で約5万人が検査や利用ができるシステムに拡張している。Now Platformですぐに開発することができた」と話す。

ロサンゼルス市がServiceNowで構築したCOVID-19のPCR検査予約管理システム
ロサンゼルス市がServiceNowで構築したCOVID-19のPCR検査予約管理システム

 Now Platform責任者のJosh Kahn氏は、App Engineを使って誰もがローコード/ノーコードのアプリケーション開発ができると説明する。COVID-19の感染が急拡大した米国では、前例のないスピードで対応しなければならず、しかもその中で状況を可能な限り正確に把握できるよう業務内容も常に変えなければならなかった。「業務プロセスにデジタルを取り入れることで、業務への効果を測定し、可視化して改善を図り、業務プロセスの最適化と自動化につながる」とKahn氏。

 米国ワシントン州でも同様に、COVID-19流行初期の1月末に緊急対策チームを立ち上げ、約3週間で感染者に関する情報を収集・共有するためのアプリケーションを開発した。同州の保健局でITと医療技術責任者を務めるCallie Goldsby氏は、「当初は電子メールをベースにした業務フローだったため(増加し続ける)情報を把握したり共有したりすることが非効率的だった。まず迅速にアプリケーションを開発して重要な情報を効率的に把握し、処理を自動化している、次にセンターオブエクセレンスを設置し、対策チームでの利用拡大を円滑に進めている」とステップバイステップで取り組んでいると語った。

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