ビッグデータAIでIT運用管理を自動化するサービスナウ

國谷武史 (編集部)

2019-01-16 06:00

 企業のIT部門にとってIT運用管理の効率化は“永遠”の課題といえるだろう。IT/ビジネスサービス基盤のSaaSを手掛ける米ServiceNowでIT運用管理技術の研究開発を指揮するバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのPablo Stern氏は、「ビッグデータと人工知能(AI)の機械学習を組み合わせていくことで、IT運用管理の自動化を可能にする」と話す。

 同社はITサービス管理(ITSM)を中核に急成長を遂げているが、ITSMと隣接するIT運用管理(ITOM)もまたフォーカスすべき領域という。「われわれの顧客はクラウド志向が強いが、オンプレミスを抱えながらマルチクラウドへのシフトは、やはり運用管理が煩雑で大変だとの声が多い。Platform as a Serviceのテクノロジの進化も早く、少ない人員では追従しきれなくなっている」(Stern氏)

ServiceNow ITオペレーションマネジメント担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのPablo Stern氏
ServiceNow ITオペレーションマネジメント担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのPablo Stern氏

 Stern氏は、現在のITOMが抱える課題に(1)可視性の欠如、(2)ビジネスインパクト、(3)シャドーITによるリスク――の3つを挙げる。(1)は限られたIT部門の人員ではオンプレミスからマルチクラウドにまたがるIT環境の把握に限界があること、(2)は「デジタル変革」に伴ってビジネスで活用されるITの重要性が増していること、(3)はIT部門の知らないところで事業部門などが次々に新しいITを導入してしまうことによるコンロールの欠如だという。

 ServiceNowのITOMでは、オンプレミスのIT運用管理ツールやクラウドの管理機能と連携し、構成管理データベース(CMDB)に基づく変更管理やイベント監視・管理、サービス管理などの機能をシングルビューで提供する。こうした統合的な運用管理機能は、競合のツールやサービスでも既に実現されているが、同社の強みとしては「Now Platform」と呼ぶ単一のプラットフォーム上で、ITOMやITSM、セキュリティ管理、人材管理(HCM)といった広範なサービスを展開している点にある。

 「“サイロ”化している各種システムの膨大なデータをNow Platformに集約し、機械学習を通じた分析から洞察を獲得して、ユーザーに最適なアクションを提案する。Now Platformを通じて共通化されたデータ、ノウハウを各種サービスにも活用できる」(Stern氏)

 ITOMにおいては、例えば、あるワークロードでのサービスレベルの低下を検知した場合、管理者にそのイベントを通知したり、推奨される修復方法を提案したりする。だが同社が目指すのは、ITシステムの予防保全や自己修復といった一歩進んだ自動化だという。「IT運用における究極の目的はシステムの自律化にあるだろう。現在はまだその初期段階に過ぎないが、自動化の成熟度を着実に高めていく」(Stern氏)

 これまでIBMや日立製作所などと協業。直近では2018年11月に、IBMと「Multicloud Management Platform」とServiceNowのITサービス管理ツールとの統合計画なども発表し、KubernetesやCloud Foundryへの対応も図るなど、マルチクラウド環境の運用管理面を強化している。今後もCMDB情報の活用やモバイルによるユーザー体験の向上にも注力していくという。

 IT運用管理は地味な印象もあるが、Stern氏は同社が「人」にフォーカスし、ITOMの提供も運用管理者のワークスタイル変革といった価値に重きと置いていると話す。

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