ランサムウェアが危険なのは、多くの場合、被害者が身代金を支払う以外に選択肢はないと思ってしまうからだ。特に、ほかの選択肢を選んだ場合、ネットワークをゼロから再構築しなければならず、数週間、数カ月間にわたって業務ができなくなるような場合にはそう感じてしまう。
しかし、「WannaCry」の世界的な流行から3年経ってSophosが発表したレポート「State of Ransomeware 2020」によれば、サイバー犯罪者に身代金を支払った場合の復旧のコストは、実際には2倍になる可能性があるという。
ランサムウェアの攻撃を受けた組織を調査したところ、身代金を支払った組織の被害額は平均で140万ドル(約1億5000万円)だったが、要求に従わなかった組織の被害額は、その約半分の73万2000ドルだったことが分かった。
これは多くの場合、攻撃者から暗号鍵を手に入れても、問題が簡単に解決できるわけではないためだ。身代金を支払った上に、金銭を支払ってもロックダウンされたままのネットワークがあれば、その一部を復旧する上で追加費用が必要になる。
レポートによれば、被害を受けた企業の4社に1社が、ファイルを取り戻すために身代金を支払ったと答えている。攻撃者にとってランサムウェアが有効な戦術であり続けている理由の1つはそのことにある。被害企業は数十万ドル単位の身代金の支払いに応じることもあり、それがサイバー犯罪者が攻撃を続ける動機になっている。また、攻撃者の正体を突き止めることも難しい場合が多い。
しかも、攻撃者が再び同じ組織を攻撃することさえある。これは、それらの組織が適切なセキュリティインフラを持っておらず、その一度は身代金を支払ったことを攻撃者が知っているためだ。
SophosのプリンシパルリサーチサイエンティストChester Wisniewski氏は米ZDNetに対し、「(一度身代金を支払えば)、身代金を支払うことに抵抗がない組織として狙いをつけられ、将来再び標的になってしまう可能性がある」と述べている。