この特集では、自社の新入社員研修を完全オンライン化した企業を前後編で取り上げる。企業の挑戦を振り返るとともに、その中で得られた気付きに迫りたい。前編では、凸版印刷の取り組みを紹介した。オンラインでも充実した研修を行うことで、自社の働き方改革や新たなビジネスにもつなげようとしているのが印象的だった。後編である今回は、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)のオンライン新入社員研修を紹介する。
NTT Comは、5つのグループ会社を含め293人の新入社員を対象とした「スタートアップ研修」を4月1日~5月8日に実施。そして5月11日、新入社員は各部署に配属され、一番長い所では8月末まで配属先の担当者が研修を行っている。5月25日の緊急事態宣言解除後は、自社のガイドラインのもと対策を講じながら、オンラインと集合型を組み合わせているという。
同社も凸版印刷と同様、元々は全ての研修を対面で行う予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2月27日にオンラインでの実施を決定した。スタートアップ研修を担当する人材開発部門では、2月18日からプランBとしてオンライン化を視野に入れていたという。そして3月に入ってからは、ITツールの選定・検証や、カリキュラムの設計を行った。
オンラインでの実施が決まった時の心情について、人材開発部門の安田真由香氏は「研修開始まであまり日数がなかったので、スケジュール面が心配だった。ただ、経験のないことだからこそ成功させることができれば、新しい人材育成につながるのではないかと前向きに捉えるようにした」と振り返る。
NTT Com ヒューマンリソース部 人材開発部門の安田真由香氏
また同部門の小林友道氏は、従来の研修における課題を挙げる。「NTT Comは研修センターを持っているが、本社から離れた所にある。以前から『ここに集まる必要はあるのか』という声をもらっていたが、集合からオンラインへの切り替えには踏み切れていなかった。そのため今回のオンライン化は、これまでの研修を変えるチャンスでもあると感じた」
NTT Com ヒューマンリソース部 人材開発部門の小林友道氏
オンライン新入社員研修の企画は、安田氏と小林氏を含め人材開発部門の4人が担当。カリキュラム設計などを担当した安田氏は「どうしたらオンライン化できるのかについてイメージが湧かない状態から、『オンラインでも研修ができる』と自信を持って思えるまでが大変だった」と語る。また単にオンライン化するだけでなく、本来の目的である新入社員の成長も実現させなければいけない。そのため、選定したITツールを何度も検証し、まずは自分たちが使いこなせる状態にした。その上で、ITツールとカリキュラムを組み合わせ、どのような設計にするのがベストなのかを考えていったという。また、マインド系の研修は外部講師が担当するため、研修会社にも入念なオリエンテーションを実施した。
研修の実施に当たり、NTT Comは「セキュアドPC」、通信容量無制限のモバイルWi-Fiルーター、マイク付きイヤホンを全新入社員の自宅に配送。セキュアドPCは、ネットワークに接続しなくても利用できるファットクライアントである一方、「Windows 10 Enterprise」で標準搭載されているセキュリティ機能や、NTT Comのセキュリティオペレーションセンターなどにより、安全性も確保しているという。同社は2018年にセキュアドPCの導入を開始し、現在は全社で利用している。