ドイツの行政機関の間では、オープンソースソフトウェアに向かうトレンドが加速している。
その最新の動きが、ハンブルク市議会の連立協議のなかで議員らによってなされた、行政関係のソフトウェアをMicrosoft製品からオープンソース製品に移行する準備ができたという宣言だ。
この宣言は、ハンブルク市の向こう5年間の運営方針を規定する、ドイツ社会民主党(SPD)と緑の党の間で交わされた200ページに及ぶ連立合意書のなかに記されている。
この合意書は現地時間6月2日に発表されたものの、本稿執筆時点でまだ調印はされていない。ハンブルク市議会の過半数を占めているこれら両党は、ミュンヘン市でも連立政権として過半数を占めており、ハンブルク市に先んじて5月、市独自のオープンソースソフトウェアに戻すという合意に達している。
シュトゥットガルトに拠点を置くOpen Source Business Alliance(OSBA)の議長を務めるPeter Ganten氏は「ドイツの各州と地方自治体で既に同様の道を進む組織が増えるなか、ハンブルク市も今回の決定でその流れに加わることになった」と述べた。
同氏は、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州や、テューリンゲン州、ブレーメン市、ドルトムンド市、ミュンヘン市で同様の意思決定がなされている点に言及した上で、「ハンブルク市は常にMicrosoft製品の採用に積極的であったため、その意思決定は注目に値する」と付け加えた。
緑の党のハンブルクミッテ支局の責任者であるFarid Mueller氏は、自らのウェブサイトに「将来的にわれわれは、デジタル管理(システム)でのオープンソースソフトウェアの利用拡大を目指していくとともに、自らでオープンソースのコードを開発していきたいと考えている」と記している。また同氏によると、ハンブルク市はデジタルでの独立を象徴する都市になりたいと考えているという。
さらに、同市の職員は法的な手段や、市議会による入札といった手段を通じて、プロプライエタリーなソフトウェアに関するさらなる洞察を得ていきたいと考えているとMueller氏は述べた。
環境保護に力を入れる緑の党にとって、デジタルサービス全般を通じたエネルギーの利用についてより優れた分析が可能になるという点で、この決定は特に重要なものだ。
市や州の各機関も人工知能(AI)の独自バージョンを開発することになるだろう。ただこれはオープンでなものでなければならないと、Mueller氏は5月下旬に実施された連立条件の話し合い後のインタビューで語った。そして同氏は「公務員から一般大衆に至るまで(ありとあらゆる人々は)AIがどのように機能するのかを知っておく必要がある」と主張した。
ハンブルク市の議員らが「Einstieg in den Ausstieg von Microsoft」(Microsoftからの旅立ちの始まり)でそのプロセスを説明しているように、この取り組みはハンブルク市議会で使用されている「Phoenix」という、クラウドベースのオープンソース版オフィスシステムを活用するものになるだろう。また、切り替えはすべて、自発的なかたちで始められることになる。