NECの森田次期社長が会見--海外やAI、5G、生体認証に活路

國谷武史 (編集部)

2020-11-30 17:27

 2021年4月1日付でNECの代表取締役 執行役員社長 兼 CEO(最高経営責任者)に就任する代表取締役 執行役員副社長 兼 CFO(最高財務責任者)の森田隆之氏と、現職の新野隆氏が11月30日、記者会見を開いた。森田氏は、2025年度を目標とする次期中期経営計画で、AI(人工知能)や5G(第5世代移動体通信システム)、生体認証などのテクノロジーを中核に位置付け、グローバル事業でさらなる成長を通じて長期利益を最大化していくとの経営方針を表明した。

NECの新社長CEOに就任するCFOの森田隆之氏(右)と現職の新野隆氏
NECの新社長CEOに就任するCFOの森田隆之氏(右)と現職の新野隆氏

 新野氏は、今回の社長交代について、2020年度までの現中期経営計画で掲げる営業利益率5%の達成が視野に入り、コロナ禍による社会の大きな変化も踏まえ、新しい中期経営計画となるタイミングが最適との判断に至ったと説明した。同氏は、同日付で新設(新野氏によれば約20年ぶりの再設置)される副会長に代表取締役として就任する。

 会見の冒頭で新野氏は、「2016年の就任以来、社会ソリューション事業やデジタル領域を通じて収益構造の改革、不採算事業の見直しなど営業利益率5%達成への道筋をある程度付けることができ、実行力を高める企業文化の改革の取り組みも定着してきた」と総括。現在策定中の新中期経営計画でグローバルビジネスの拡大を据えることから、「事業開発や海外ビジネスで経験が豊富な森田氏がふさわしい」と述べた。

 森田氏は1983年の入社以来、特にM&A(買収・合併)や海外事業、構造改革などに取り組み、Siemensとの協業やルネサスエレクトロニクスへの半導体事業の統合、アビームコンサルティングへの出資などの多数の大型案件に携わってきた。

 現中期経営計画で成果が見えていることで同氏は、「残り4カ月をCFOとして全うし、(新社長として)この流れを止めることなく、さらなる高みを目指して、より収益性の高い事業と新規事業で成長させていく。改革は人が成すものであり、人材を大切にしたい。次期計画では日本を代表するテクノロジー企業としての立場を実現したい」と語った。

 両氏は、重点領域として電子政府やデジタル金融、テクノロジーではAIや生体認証などを掲げる。現計画における社会ソリューション事業でも重点的に取り組み、「安心・安全」などをキーワードに同社の中核事業として強固なものとしてきた。次期計画でも継続するとともに、通信では5Gを新たな成長軸に加える。「5Gによってネットワークは再び国や社会を担うインフラに位置付けられ、その影響は深くて広い。中長期的なビジネスになり、腰を据えて取り組む」(森田氏)とした。

 また森田氏は、次期計画における業績目標について、「グローバルビジネスとは日本を含めるもの。ただ、日本企業としての海外比率という観点なら50%に引き上げる」「営業利益率5%を見込むが、グローバルで見ればようやく普通の会社になる段階。買収した海外SaaS企業などによる営業利益率10%台の事業体を形成していく」「売上高はいろいろなものを積み重ねて伸ばすよりフォーカスエリアで築いていく」「ライフタイムのキャッシュフローを大事にしたい。長期利益の最大化させていく」などと説明した。

 なお、2021年4月以降の当面は、森田氏と新野氏、取締役 会長の遠藤信博氏が経営をリードしていく形になり、新野氏は「重要な対外的な活動は引き続き会長(遠藤氏)が担う。私としては、コロナ禍の変化のさなかにあって(森田氏の)新体制をしっかり支える立場」と説明。報道陣からの質問に、「(新体制が安定するまでの見込みは)1年ほどかもしれない。その時点において、より良い体制が何かを改めて検討したい」と語った。

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