システムインテグレーター(以下、SIer)大手の日鉄ソリューションズ(以下、NSSOL)が、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援事業に注力している。同社ならではの事業戦略を、代表取締役社長の森田宏之氏に聞いた(写真1)。
写真1.日鉄ソリューションズ代表取締役社長の森田宏之氏
コロナ禍でも多くの企業がDXに投資を継続
「2021年は本格的なDXの“夜明け”の年になる」――。まずは「ゆく年くる年」の時期なので、今回のインタビュー取材で森田氏が語った最も印象深い言葉を挙げておく。「本格的なDXの夜明け」とはどういうことか。後にひもといていこう。
NSSOLはかねて、製造業、流通サービス業、金融業などの顧客企業に、基幹業務をはじめとしたミッションクリティカルなシステムを提供してきたSIerだ。そんな同社がDX支援事業をどのように推進しているのか。
再び、ゆく年くる年にちなんで、森田氏に2020年を振り返ってもらったところ、「新型コロナウイルスによるパンデミック(感染症の大流行)で、ビジネスに影響を受けたお客さまも少なくなかった。それでも多くのお客さまは『こんなときだからこそDXに取り組む必要がある』と判断して投資を続けておられる」とのこと。
そんな顧客の要望に応えて同社もDX支援事業に本腰を入れ、2020年10月にはその最新の取り組みについてオンラインで記者会見を開いて公表した。そこから今回の森田氏の話につながるポイントを2つ挙げておきたい。
1つは、DXの定義についてだ。NSSOLでは「デジタル技術とデータを自在に駆使した『持続的』な業務・ビジネス変革」と定義付けている。「持続的」という言葉がポイントだ。これについては後述する。
もう1つは、企業がDXで直面する難所の話だ。「個別最適を超えた統合(インテグレーション)による変革」がその難所だとして、会見では図を交えながら次のような説明が行われた。
「企業は長い年月をかけて基幹業務を処理するSoR(System of Record)を整備してきた。SoRとは、企業内の業務を実行するための基幹システム群で、会計や経理・人事、商品・製品管理、受発注管理、製造・在庫管理などのシステムから構成されている。さらに、顧客とのつながりをつくるためのSoE(System of Engagement)の導入、洞察や知見を得るためのSoI(System of Insight)の試行活用も行っている」(図1)
図1.企業がDXで直面する難所の話(1)
「それらは、これまで業務プロセスや組織ごとに個別最適化されていたが、高い価値をより柔軟に生み出すためには、業務や組織の横断的な統合による全体最適化が必須となる。全体最適化はデジタル技術が可能にするが、その過程で『組織の壁』という難所が現れる。目的を共有・啓蒙し、バラバラな業務やデータをつなぐため、多岐に渡る変革の統制が必要となるが、組織の壁を越えること、組織を変えることは、極めて難易度が高い」(図2)
図2.企業がDXで直面する難所の話