FacebookやAppleなど、さまざまなテクノロジー企業が金融サービスに熱い視線を送る中、国際通貨基金(IMF)は、今後テクノロジーのどのような面が金融に革新をもたらすのかを考察してきた。
金融危機に陥った国に資金を融資する国際機関であるIMFの研究者らは、実店舗型の銀行が衰退する一方で、過去10年間にフィンテックが台頭してきた理由について見解を明らかにした。
研究者らは、ユーザーが使用しているブラウザーの種類やデバイス、個人のオンライン検索履歴や購入履歴といった金融データ以外のデータを利用して、スマートフォンやオンライン検索、ソーシャルメディアがどのように金融分野における技術革新を促進してきたかを説明している。
IMFはブログで次のように述べた。「フィンテックは、インターネット接続に利用されているブラウザーやハードウェアの種類、オンライン検索履歴、購入履歴など、金融以外のさまざまなデータを利用することでジレンマを解消する。最近の研究から、人工知能(AI)や機械学習を利用すれば、こうした非金融データソースは、従来の信用評価手法に勝る場合が多く、例えば、非正規雇用の労働者、地方の家庭や企業の信用評価を高めることが可能になり、ファイナンシャル・インクルージョン(あらゆる人に金融に関する知識やサービスを提供すること)を促進できることがわかっている」
こうした手法は、銀行が採用している従来の信用リスク評価手法よりも優れている可能性があり、非正規雇用の労働者から、熟練した技術を持つ高報酬の海外からの新たな労働者まで、銀行のサービスを受けられない人々や融資に向けて評価する手段がない人々に対して、信用評価を付与するのに役立つ可能性があると研究者らは主張している。IMFによると、世界全体で17億人の成人が銀行口座を持っていない。
フィンテックや、信用度を評価するための代替となる情報の利用は、新しい手段ではない。そのためIMFは、FacebookやAmazonのような企業が顧客の経済状況を銀行よりも把握し始める可能性がある中、従来型の銀行以外の市場の進化とそのポリシーが及ぼす影響を研究しているにすぎない。
IMFのブログには次のように書かれている。「消費者の日常生活の大部分に浸透し、デジタルフットプリントと利用可能なデータを増やしてきたソーシャルメディアやモバイル通信、オンラインショッピングのさまざまなデジタルプラットフォームによって、コミュニケーション革命が促進されている」
「AmazonやFacebook、阿里巴巴(アリババ)のようなプラットフォームは、さらなる金融サービスをエコシステムに取り込み、決済や資産管理、金融情報の提供で銀行と競合する新興の専業プロバイダーの台頭を可能にしている」
IMFの研究者らは先ごろ、金融関係の仲介や技術における新たな動きに注目する調査報告書を公表した。
報告書では、Facebookが推進する暗号資産(仮想通貨)プロジェクト「Libra」について直接的には考察されていないが、世界各国の規制当局はLibraに懸念を抱いている。
Libraは先ごろ「Diem」に改称された。「ステーブルコイン」の発行を目指すFacebookの取り組みは、2021年1月にようやく始動するかもしれない。
Libraは、通貨の主権や安定性を脅かし、マネーローンダリングに利用される恐れがあるとの懸念もある。だが、Facebookが推進する計画は、中国のデジタル人民元や、日本のデジタル円など、中央銀行のデジタル通貨に対する関心もかき立ててきたかもしれない。
欧州中央銀行(ECB)は現在、現金の使用頻度が減った欧州の人々だけでなく、EU域外の国のデジタル通貨を将来利用する欧州の人々に対する防御策としても、デジタルユーロ発行の影響について熟慮している。
ECBのChristine Lagarde総裁は最近、次のように述べていた。「デジタルユーロの発行は、中央銀行の通貨の継続的な流通と通貨主権を確保する上で必要となるかもしれない」
「適切に設計されたデジタルユーロであれば、決済業界との相乗効果を生み出し、民間企業がデジタルユーロ関連のサービスに基づいた新たな事業を開発できるようになる可能性がある」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。