“情報銀行”に向けた「パーソナルデータ活用基盤」の取り組み--NTTデータ

渡邉利和

2020-07-08 11:00

 NTTデータは7月7日、今後の法改正を見据えたパーソナルデータ流通基盤の活用に関する報道機関向けのオンライン説明会を開催した。個人情報をより効果的に保護しようという動きが強まる一方で、6月に試行版としてリリースされた「新型コロナウィルス接触確認アプリ」のように、個人のプライバシーなどを侵害することを避けながら社会全体にメリットをもたらす形で個人情報を活用する取り組みも始まっている。

 今回の説明会では、パーソナルデータ(個人情報)を取り巻く社会状況全般について、主に最新の法規制の動向を踏まえた包括的な説明が行われたほか、同社の「パーソナルデータ流通基盤」の構築に向けた取り組みの概要も紹介された。

 始めに、金融事業推進部 デジタル戦略推進室 部長の花谷昌弘氏が、個人情報保護法の改正と新型コロナウイルス対応へのパーソナルデータの活用について説明。2019年12月17日に公正取引委員会が公表した「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」を紹介した。

 これは、いわゆる“プラットフォーマー”に対して「何が濫用行為と見なされるのか」を明確化したものと位置付けられる。「個人情報の不当な取得」や「個人情報等の不当な利用」について具体的な想定例や見解が示されているので、企業側でも濫用行為にならないように適切な対応を行う必要がある。

 また、6月12日に交付された「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」(いわゆる個人情報保護法改正案)についても、変更のポイントが示された。同氏は、こうした最新の法規制などに対応する企業側での取り組み例として、2019年8月に公表された「NTTドコモ パーソナルデータ憲章」を紹介した上で、企業がやらなくてはならないこととして「データベース(DB)統合」や「電子開示サービス」「同意管理」などのを挙げた。

 消費者から個人情報の利用停止が申請された際には適切に対応する必要がある。個人情報がどこでどのように保存されているかを把握し、一元的に正しく取り扱えるようになっていなくてはならない。そのためには、企業内でデータベースが分散しているような状況を解消し、統合されていないといけない。また、個人情報に関して「誰からどのように同意を得たか」の情報をきちんと管理する必要もあり、情報管理の基盤が正しく整備されていないと対応が難しくなる。

 逆に消費者側の問題としては、サービス利用に際して個人情報の取り扱いに関する規約に同意を求められても、規約の内容を読まなかったり、内容を正しく把握できなかったりすることを指摘。この問題に対する解決策の提案として「安全値」の提供を検討していることが紹介された。

 例として挙げられたのは、個人情報の取り扱いに関する規約自体を自動作成するようにし、その際に同時に安全値を算出するというもの。個人情報の取り扱いに関してはある程度対応が共通化され、規約自体もおおむね標準的な内容が確立されてそこに集約されていくと考えれば、こうした自動化も可能になると思われる。

 同氏は「データは保有することに価値があった時代から、活用することに価値がある時代になる」と指摘。各種法規制との整合性を保ちながらデータの効率的な活用を可能にするための基盤整備が重要になるとの認識を示し、同社では中核となるパーソナルデータ流通基盤の構築に取り組んでいくとした。

 続いて、社会基盤ソリューション事業本部 デジタルソサイエティ事業部 課長の作田豊氏がパーソナルデータ流通基盤「My Information Tracer(略称:mint)」の概要を説明した。2020年10月に商用リリースが予定されているプラットフォームで、現在は導入予定企業と共同で準備を進めている段階だという。

NTTデータの「My Information Tracer(mint)」の概要 NTTデータの「My Information Tracer(mint)」の概要
※クリックすると拡大画像が見られます

 新型コロナの世界的な大流行に対応する過程で「DX(デジタル変革)が2カ月で2年分進展した」という声も聞かれたが、データ活用についても接触確認アプリなどの具体的なユースケースが出現したことで一般にもイメージが伝わりやすくなり、データ保護のみを考える視点から“保護しつつ活用する”という段階に進みやすくなった面があるのかもしれない。

 情報銀行という形になるかどうかはともかく、こうした情報活用基盤については各企業が個別に実装するよりも共通化されたプラットフォームとして成立する方がメリットは大きいと思われるので、今後の進展が注目される。

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