The Linux Foundationの「Open Source Summit」が米国時間6月29日から開催されている。オンライン開催となった今回のイベントでは、VMwareの最高オープンソース責任者Dirk Hohndel氏と、Linuxの生みの親であるLinus Torvalds氏が再び登場し、Linux開発について多岐にわたる会話を交わした。
これら著名な両氏の対談は、最近リリースされた「Linuxカーネル5.8」のサイズが大きいことについてのHohndel氏の質問から始まった。その質問は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のまん延で開発者が自宅で作業するようになったのが、カーネルサイズの大きさに影響を与えた可能性があるかどうかというものだった。これに対して、以前から自宅で作業しているTorvalds氏は、「私は5.8の(肥大化の)理由として、貢献者らが自宅にいたことも考えられるが、複数のグループからほぼ同じタイミングで5.8向けの新機能が提供された可能性もあると感じている」と述べた。
COVID-19によって、進歩に遅れが生じているテクノロジーが数多くある一方、進歩が加速しているテクノロジーもある。しかしLinux開発はCOVID-19の影響をほとんど受けていない。Torvalds氏は「私の共同開発者たちのなかにも、大きく影響を受けた人はいない。彼らのうちの1人が1~2カ月、オフライン状態だったため、私は少しの間心配したが、その人物は反復運動症候群(RSI)にかかっていただけだった。RSIは折り合いを付けなければならない一種の職業病だ」と付け加えた上で、「Linuxコミュニティーには、離れた場所にいる人々との日常的な電子メールのやり取りがいかに多く、実際に会うのは極めてまれという興味深い特徴がある」と述べた。
いずれにしても、Torvalds氏はこの新たなビルドを信頼している。同氏は実際のところ、Linuxカーネル5.8の最初のリリース候補版が稼働する新しい開発マシンを用いてビデオ会議に参加していた。
同氏は、「AMD Ryzen Threadripper 3970X」プロセッサーを搭載した新たな開発用デスクトップマシンが生み出すファンの騒音を気にしていたと後になって語ってくれたが、実際のところこのマシン上で同カーネルはうまく機能していると述べた。同氏は、スピードを必要としていたためにこのマシンに移行したとし、「今では『allmodconfig』によるテストビルドが、以前の3倍のスピードで作成できる」と述べた。これは重要な点だ。というのも同氏の言葉を借りると「1日あたりにして自らの限界を超える20~30の(プルリクエスト)処理をこなそうとしている。そのための大量のコンピューティングパワーなのだ」という。
Hohndel氏は次に、Linuxカーネル開発者のコミュニティーの多様性に話題を移した。同氏は次のように述べた。
われわれのコミュニティー(VMware)やCNCF(Cloud Native Computing Foundation)に目を向けた際に感じることの1つに、Kelsey Hightower氏やBryan Liles氏といった黒人のリーダーやコントリビューターの割合が著しく高いという点がある。一方、Linuxではそういった状況になっていないと思う。私が気付いてないだけなのか、それとも30年近く前にスタートした組織であるが故に新しい組織に比べて人種的な多様性に劣るだけなのだろうか?