優れたITリーダーの条件は何か。この問いに対する明確な答えがあったとしても、その答えは、この12カ月の間に何度も形を変え、再構築されてきたことだろう。
2020年の最高情報責任者(CIO)は、技術、ビジネス、経営面でのさまざまな責任の複雑なバランスをとりながらこの1年を切り抜けてきた。彼らは、ほとんど一夜にしてリモートワークが可能な環境をセットアップし、リモートからITシステムを維持しつつ、地理的に分散し、精神的に疲弊している従業員の面倒を見なければならなかった。
この複雑な綱渡りは、ITリーダーのビジネスに対する考え方に大きな影響を与えている。この12カ月で、CIOは、技術を確実に機能させる裏方のサービス提供者から、コロナ禍後の企業を形作るにあたって重要な役割を果たすビジネスリーダーになった。
それは経験豊富なITリーダーであるPaul Coby氏自身が体験していることだ。John Lewis PartnershipやBritish AirwaysでCIOを務めてきたCoby氏は、2018年4月に大手化学品メーカーであるJohnson Mattheyに入社した。同氏はこの12カ月間、厳しい状況の中で、IT部門が成果を上げられるように力を尽くしてきた。ほかのITリーダーと同じように、Coby氏も2020年は転換点だったと述べている。
「多くのCIOやITディレクターが同様の経験をしていると思うが、今や多くの人が、なぜITが重要かを理解した」と同氏は言う。「各企業のCIOは、企業の上級幹部として、3月から4月にかけての3週間でデジタル技術を3年分は進めた。私は、今では多くの企業がデジタル技術について理解していると思う」
このことは、これからのITリーダーは、これまでとはまったく異なる期待に応える必要があることを意味している。裏方として働くのではなく、存在感を示しつつ協力しながら働くことが求められるということだ。取締役会は、企業をデジタル化された未来に導く手助けができるITリーダーを必要としている。これは、Gartnerが最近発表した、「10 CIO Resolutions for 2021(2021年にCIOが目指すべき10の目標)」の内容とも通じるテーマだ。
テクノロジーの面倒を見ることは依然としてCIOの重要な役割の1つだが、Gartnerが挙げた目標は、すべてソフトスキルに関するものだった。Gartnerによれば、これは前年の課題を反映したものであり、今後12カ月間に必要とされる具体的な能力に対する答えだという。